夜。夕餉を頂いて自室の架子床の上でくつろいでいる春蘭の元へ宇翔が訪ねてきた。

「金賢妃様。いきなりですみません」
「いえいえ。何かありましたか?」
「陛下、今日の夕餉を喜んでお召し上がりになられていましたので早速ご報告に参りました。勿論、また1週間後にも金賢妃様がおっしゃる通りそちらへ報告に参る予定でございます」
(やった! しゃぶしゃぶはオッケーって事ね!)

 宇翔曰く、今日の浩国はきちんと朝餉昼餉夕餉を食べたそうだ。朝餉はおかゆをほんの少し食べただけだが、昼餉と夕餉は余す事なくしっかりと食べたと言う。

「薄く切った豚肉のお鍋、あれは金賢妃様がご考案されたものとお聞きしました」
「そうなんです! 薄く薄く切ったら食べるかな? と思いまして……」
「臭みや硬さもなく、食べやすいと陛下は仰っておりました。あれならいくらでも食べられる。と……」
(マジか! じゃあ、しゃぶしゃぶ肉で色々応用とかできないかな……)

 春蘭が考えていると、宇翔はにっこりと笑う。

「雄力殿ら武人の者達はある事を仰っておりました。このまま陛下が食事により身体つきがしっかりしてくれば、武術の鍛錬もより力が入るのではないか。と……」