(どうかな?)

 箸で灰色になった豚肉を掴んで食べてみる。食感はちょうど良い感じの柔らかさで硬くない。臭みも春蘭からすれば気にならない程度だった。

「どうぞ、いただいてみてください」

 春蘭は女官や料理人達にも試食を勧めた。

「うん。柔らかくて食べやすいですね」
「これなら、陛下も頂くかもしれません」
「さらに葉野菜も入れて煮詰めたら美味しいかもしれませんね」
「残ったおだしでお雑炊にするのも美味しそう」

 あちこちから感想や新たな考えが泉のように湧いて出て来るのを聞いた春蘭は、手ごたえを感じた。

「金賢妃様はお料理にお詳しいのでございますね」

 ひとりの料理人からの言葉に春蘭はいやいや……。と照れ笑いを浮かべた。

「ここまで料理に詳しい妃は見た事ありません。金賢妃様のお考えになる料理が気になって仕方がないくらいに」
「そう仰っていただき嬉しいです。……へへ……。あ、この豚肉のお鍋なのですが早速今日の夜に提供してみてはいかがでしょうか?」
「はい! 提供してみます!」

 豚肉のしゃぶしゃぶが浩国の夕餉に提供される事も決まり、春蘭の心の中は更にやりがいであふれ出す。

(とりあえず、浩国の反応が楽しみだ)