ゆっくりと彼女が目を覚ますと、視界には見た事のない景色が映り込んだ。

「え……どこ?」

 豪華な天蓋付きのベッドに、自宅のそれよりふかふかの布団、赤を几帳とした中華風の天井。
 自宅でも病院でもない、未知の場所だ。

(わ、私……今、どこにいるの?)

 起き上がろうとすると、身体のあちこちに痛みが走る。痛みのせいで顔をしかめていると何やら物音が聞こえだした。

(ジン)賢妃様! 急に起き上がってはなりませぬ!」

 周囲に中華風の着物を着用した若い女性達が、ぞろぞろと現れた。

(な、なにこれ! それに今、金賢妃って言った?)

 己の名ではなく、金賢妃と呼ばれた事に違和感を感じた彼女は、勇気を出して若い女性のひとりに質問してみる事に決めた。

「ねえ、私の名前って……なんていうの? そしてあなた達は?」
「あなた様は金 春蘭(ジン・チュンラン)様……そして私達は金賢妃様にお仕えする女官でございます」
(金春蘭? そういえばその名前、どこかで聞いた事があるような……) 
「……あ!」

 何かを思い出した春蘭は勢い任せに目を見開いた。

「あ、あれだ! えっと……! 幻彩の後宮に出てくるキャラ!」

 春蘭がいきなり大声を出したので、周囲にいた女官達は肩を跳ね上げるようにして驚いた。