「周充儀……」
「もっと野菜の姿を消すか、春巻きにつける調味料があれば食べてくださるかもしれませんけど……」
(なるほど……私の考え不足だった。そうだ。お好み焼きはどうかなあ? あ、でもキャベツが無いか……)

 炊き込みご飯を食べつつ、むむむ……。と考え込む春蘭。

(よし、さっきのすりつぶす要領でそぼろ作ってみようか。そぼろなら白米ともあう)
「そぼろ、作ってみます」

 宮女達が挽いてくれた肉と、細かく切り刻んだ野菜達を混ぜ合わせるように炒め、最後に味つけに味噌と醤油を少し加える。

(よし、これで完成。ごはんのお供って感じ)
「そぼろでございますか?」

 はい。と答えると雪は美味しそうっすね……。と指をくわえそうになりながらそぼろを見つめる。

(あ、いい事思いついた!)

 ひらめきを得た春蘭は、ご飯釜から炊き込みご飯を少しよそってお茶碗の上に乗せる。そしてその上にそぼろを振り、ふたをするように再度炊き込みご飯をよそった。

「よいしょっと……」

 お茶碗から炊き込みご飯を取り出すと両手を使ってぎゅっぎゅっと三角に握ると、おむすびの完成だ。

(出来た!)
「あら、金賢妃様。それは何でございますか?」

 周充儀からの問いに対し、この世界にはさすがにおむすびの概念は無いかと考えた春蘭はせっかくなのでおむすびの概念を教え込む事に決めた。

「周充儀、これはおむすびというものでございます。片手でも食事が出来るとかなんとか」
「そう……では頂いてみてもよろしいかしら?」
「はい! どうぞ……!」

 周充儀が両手でおむすびの端と端を持ち、頂点の部分をぱくっとかじった。

「んんっ……! おいしい……!」