(そりゃあ主人公からすれば後宮のごはんは美味しいだろうなあ)
「ちなみに雪が一番好きな品はなんですか?」
「えっと、五目の炊き込みご飯とか鳥肉の唐揚げとかですね。炊き込みご飯、食材が細かく刻まれて入ってるのが好きです」

 彼女の言葉に春蘭ははっと息をのんだ。

(食材が細かく刻まれている。……ああ、そう言う事か!)
「金賢妃様?」
「あ、いやなんでもないです」

 春蘭がそう答えると、雪はではまた。と言って厨房の宮女にお膳を返すと去っていった。

(ふむふむ。わかったぞ。嫌いなものは細かく刻んで形を隠せば良いんだ。となればシェイカーはこの時代にはないだろうから、何か細かくすりつぶす機材でもあれば……)

 春蘭は試しに近くにいた厨房担当の者に食材を細かくすりつぶす何かは無いか? と尋ねてみた。

「ではこちらを使ってみてはいかがでしょうか?」

 宮女から手渡されたのは茶色い鉢とすりこぎ棒。これを見た春蘭は心の中でやっぱこれだよね。と呟きながらも手ごたえを感じ取っていた。

(これなら上等だ。ペースト状にして餃子にするのもアリかもね。肉も固形でなくミンチならいけそうかもしれない)

 春蘭は鉢とすりこぎ棒を手にし、厨房をめぐった。

(餃子にあとは……そぼろご飯とかもよさそうだなあ、それとあとは……)