「きっと大丈夫です。陛下ならいつか魚の唐揚げも美味しく頂けるようになるかと存じます」
「金賢妃……?」
「だから、大丈夫です」

 春蘭は精一杯の笑顔を作った。

「でも、金賢妃。陛下に無理をなさるような事はいけませんわよ? 陛下に手厳しい事はなさってはなりませんわ」
「いえ、陛下ならいつか、苦手な食材も無理せず頂けるようになるかと」

 春蘭の言葉に白徳妃は一瞬だけピリッと眉間に皺を寄せた。

「金賢妃。そなたはそう思ってくれるのだな」
「はい。私は陛下を信じております」

 浩国と春蘭の目線が交錯する。

(そうだ、いい事思いついた!)
「あの、陛下。1週間後にまた夕餉を楽しみませんか? 私が料理を作ります。勿論妃の方々もたくさん呼んで楽しみましょう」
「金賢妃……わかった。そなたの誘いに乗ろう。白徳妃はどうする?」
「わ、私は……」

 口を閉ざし思案する様子を見せる白徳妃を、春蘭は注意深く見つめる。

「陛下がそうおっしゃるなら私も参加いたします。金賢妃が料理を直々にご用意するという事ですから、楽しみですわ」

 ふふっと笑う金賢妃の顔にはどこか硬く見えた。

「では決まりだな。金賢妃の腕前拝見と行こう」
(さっきは魚食べてたわりにはまだ浩国は私の事を信用しきってないみたいに見える。ここが重要ね)