「ね――花音、マイタバよってかん？」
「いいね、フラペチーノでも飲もうかなあ」
「うちおなか減ったからチキンサンドでも買お――」
「あんた食べ過ぎだって！」
「ははっ」

　バスを降りた花音達は、バス停のそばで一旦立ち止まる。

「電話鳴ってね？」
「あ、お母さんからだ」

　スマホ画面には母親という白い文字がでかでかと映し出されていた。

「もしもし？　お母さん？」
「花音、今どこにいるの？」
「駅だけど……」
「ああ、それならちょうど良かった。お味噌買うの忘れてたから買ってきてくれない？　駅ビルにスーパーあるでしょ？」

　母親からの頼みに花音ははあ……。と小さくため息を吐く。

「あ――はいはい」
「帰ってきたらレシート渡して。お味噌の分のお金渡すから。じゃ、よろしくね」
「うん、わかった」

　電話を切った花音が友人達と一緒に和気あいあいと道路を渡っていた時だった。

「えっ」

　突如、彼女の右横に某運送会社のトラックがカーブを曲がり切れずに迫りくる。先に渡り終えた友人達が彼女の名を叫んだのと、トラックが花音をよけきれずに衝突するのがほぼ同時の事だった。

「花音――！」

　硬く重い衝撃が花音の全身に襲い掛かった。彼女の視界は真っ黒に変わり、意識を手放した。