「わたくしの事は周充儀で結構。様はお付けにならなくて構いません。以前は様を付けずに呼んでいらしたかと思うのですけれど、どなたかに叱られたのでございますか?」

 周充儀からの問いに、春蘭はだってゲームで周充儀と金春蘭との絡みなんて見た事ないし! と心の中で叫びながらも、何とかはぐらかす。

「あ、やっぱり様はつけた方が良いかなあ……なんて」
「そうでございましたか。お優しい」
「そ、そうですか?」
「ええ、この皇帝陛下からいかにご寵愛を賜るかという蟲毒渦巻く世界で、そのような優しさを出すなんて思いませんでしたわ」

 周充儀は物腰こそ柔らかで丁寧だが、雰囲気には圧が漂っている。春蘭はごくっと唾を飲み込み彼女と対峙する。

「意外でしたか?」
「! ええ、まあ……」
「頭を打ったのでちょっと考え方が変わったかもしれませんね」

 春蘭が笑顔を見せると、周充儀は驚いた顔で春蘭に近づいた。

「でしたら無理はいけません! 頭を打った場合しばらくの間安静にしておく事が大事! わたくしもお父様からそう学びましたわ!」

 春蘭を寝かしつけようとする周充儀を雪は生暖かい目で見つめている。春蘭はなすすべなく架子床の上であおむけになった。