（それにしても、髪すんごい綺麗だなあ……陸上していたせいか茶色くなってぱっさぱさだったもんね。風紀委員に髪染めてるとか言われたりもしてたっけ）

　黒々とした髪を鏡越しに見つめていた春蘭へ、女官のひとりが朝食をご用意いたします。と告げた。

「えっと……今日の朝食は何でしょうか？」
「今日は……久しぶりに卵を使った雑炊にございます」
（へえ、雑炊かあ。いいねえ）

　女官から金賢妃様、お召し上がりになりますか？　と尋ねられた春蘭は、はい！　お願いします！　と元気よく返事をする。

「では、ご用意いたしますね」

　しばらくすると春蘭の目の前に、白い陶器製のお茶碗に入った雑炊が並べられた。卵だけでなく葉野菜も小さく刻まれて入っている。

（細かく刻まれてるんだな）

　早速白いレンゲですくって一口頂くと、優しく甘い味わいが口の中でふんわりと広がる。

「美味しい……！」
「お口にあったようで何よりです……！」
（手作りの雑炊よりも美味しい。ちゃんとだしが効いているって感じがする！）

　髪結いを施されながらもりもりと雑炊を食べ進めた春蘭は、あまりのおいしさにおかわりを所望する。女官達は驚きながらも雑炊を鍋から空になったお茶碗に注いでくれたのだった。