そして春蘭の手を取ると、両手で大事そうに握る。

「前世の名前は何て言うのだ?」
「か、花音です」
「じゃあ、そう呼んでもいいか?」
(ふぁっ!? は、はずいっ! 花音呼びとかなんか恥ずかしい!)

 いきなりの提案に、春蘭の頭は沸騰しそうになる。

「あ、あのですね……」
「なんだ?」
「ふたりっきりだけの時で良いですか? 陛下の偏食を無くすのと同じように、徐々に……の方が助かると言いますか」
「わかった。そうしよう。花音」

 いや待ってください! と顔を赤くさせている春蘭に女官が昼餉が出来ました! と報告に来る。

「出来たか」
「お待たせしてしまい申し訳ありません。すぐにご用意いたします」
「そうだ春蘭。そなたを皇后にすると決めた」
「へ?」

 何を言ってるのかわからない。という具合な表情を見せる春蘭に、浩国は恥ずかしがりながら口を開く。

「そなたには、これからも俺のそばで料理を作って欲しいからな」
「陛下……あ、ありがとうございます!」
「それに、そなたを愛しているからこそ、偏食も無くしたし鍛錬にも耐えられると言うか……」
「? 何かおっしゃいました?」