「俺の事などどうでも良かったのか」

 浩国の言葉に、白徳妃ははい。と迷う事無く答えた。

「陛下には惚れておりましたよ? 華奢で優美な陛下の身体はずっと眺めていたい程に……。だからこそ檻に閉じ込め甘やかしたいとも思っておりましたが……結局は皇后になって世継ぎを産まないと権力は握れないでしょう?」

 浩国の拳はわなわなと震えている。

「俺は騙されていたのだな」
「今の陛下は華奢な身体つきではなく凛々しい身体つきになっていっているのが、とても残念でなりませんわ」
「……だが、残念だったな。この身体つきは春蘭が望んだものだ。俺は春蘭を愛している。だから彼女の望む肉体になりたい」
「え」

 にやりと笑った浩国へ、白徳妃は唖然とした表情を浮かべる。自分ではなく他の女を選んだという事は白徳妃にとってはやっぱりショック極まりない事だからだ。
 そして宇翔を襲った理由としては、浩国との距離が近く優秀な医師である彼に計画がバレたくないから。という理由で、白徳妃は暗殺者を何名か女官として働かせていたのである。
 こうして罪を自白した者達のうち、白徳妃は冷宮行きとなり薬師と暗殺者は重い刑罰を受ける事となった。

◇ ◇ ◇

 騒動も収束し宇翔も浩国もすっかり回復した午前の事。この日も朝から周賢妃と武美人ら妃の何人かが栄華宮へと訪れて料理の練習をしていた。

「金貴妃様。野菜を切るのはこのような感じでよろしいですか?」
「はい。とてもいい感じですよ」
「金貴妃様。野菜炒めの味付けは味噌としょうゆと砂糖とみりんだけでよろしいのです?」
「はい、周賢妃。あまり入れ過ぎないようにお願いします」