灯籠を持った兵士がおそるおそる扉を開けると、扉の先には廊下と階段が広がっていた。

「この先か」
「さようでございます」

 廊下を歩き階段を降りるとまた黒い扉が現れる。扉をやや強引に開くと部屋があった。
 灯りをつけると部屋は作業場で、薬の入った薄い茶色の棚が四方八方にずらりと並ぶ。春蘭も兵士達に守られながら部屋に入ると、ある物を見つけた。

「! これ! 香!」

 以前異臭騒ぎを白徳妃が起こした直前に、春蘭が臭いと言っていた香の容器が3つ程木箱の中に重なるようにして置かれていた。

(まだ臭うなあ……)
「金貴妃様。ここにある薬全て出して調べるのはいかが? 勿論、まだ臭い香の容器もですわ」
「周賢妃。そうですね、皆さん! ここにある薬と香を全部回収して、丸薬の成分と合うかどうか虱潰しに調べてください!」

 春蘭の号令を受けた兵士といつの間にか駆けつけていた医師や薬師達は、一斉に薬を回収していく。

「ま、待ってください……!」

 例の薬師や白徳妃、白徳妃付きの女官達の制止は、もはや馬の耳に念仏の状態である。
 その時、ひとりの女官が春蘭に狙いを定めた。