周賢妃の冷気の籠もった言葉に、白徳妃はダメと言ったらどうするのかしら？　と少し震えた声で試すように問う。

「……力で分からせるだけでございますわ」
（強行突破じゃん！）
「まあ、野蛮でございますのね？」
「白徳妃様。恐れながら正義をなす為には、時にはこのような事も必要なのでございます」

　春蘭の胸の内ではこの現場に突入してやり取りをもっと間近で見てみたいと言う気持ちと、ここで待機した方が良いという気持ちの2つが芽生え始めていた。
　しかし、最終的には知的好奇心に負け、現場へ行くという選択肢を選ぶ。

「金貴妃様！」

　現場に現れた春蘭に一斉に目線が向いた。春蘭は武美人に後ろから羽交い締めされている薬師へちょっといいですか？　と声をかけた。

「ひっ……！」

　薬師は完全に怯え切っている。白徳妃の顔色も青くなっていった。が、相変わらず春蘭へ対しては厳しい目線を向けている。

「仕事場はどこですか？　兵士の皆さん、何かあってはいけないので構えていてください！」
「はっ！」

　兵士達は剣を抜きいつ何か起きても良いように構えを取る。薬師は身体を震わせながらあちらです……！　と部屋の右奥にある茶色い扉を指さした。
　扉は固く閉ざされており、まるで開かずの扉のような雰囲気を醸し出している。