若い男性の医師が灯篭を持ってどこかへと走り去り、他の薬師達は春蘭の元へと待機する。春蘭は例の薬師が消えていった方角を眺めていた。

(確かあそこは後宮へと繋がっているような……)
「金貴妃様。あちらは後宮の方角ですが、あの薬師の仕事場は後宮内にあるって事ですよね」
(そういえば元をたどればあの薬師は薬師達の詰所ではなくて、後宮内にいた。って事は誰か妃につき従っている可能性がある?)

 右手を顎の下に乗せ、頭の中の細胞を巡らせて考えを紡いでいく。

(そして催眠剤……宇翔さんの言っていた事……。あっ、もしかして……!)
「金貴妃様!」

 すると春蘭の目の前に周賢妃と武美人が現れる。彼女達は妃同士となった後もこうして2人で行動を共にしているらしかった。

「! 周賢妃と武美人……! よかった、ここに来て……」
「えっと……私達は陛下の様子を見に訪れたのですが……」 
「ごめんなさい武美人。えっと、陛下はさっき目を覚まされまして今は横になっております。しかし大変な事が起きたんです」

 かくかくしかじかとこれまでの経緯を2人に説明する春蘭。2人はかがんで春蘭の顔に耳を寄せ話を真剣に聞いた。