薬師達を自室に招き入れた春蘭は、この中に陛下へ丸薬を処方した者はいませんか? と質問するが、皆知らないと答える。

(……まじか)
「あの、薬師はここにいる方で全員でしょうか?」
「いえ、休みが5人と後宮にいらっしゃるのが3人おります」
「後宮にいる薬師をここに呼んでください」

 春蘭が指示を出すと、薬師達は蜘蛛の子を散らすように去って行った。

(誰も知らない訳は無いと思うんだけど)

◇ ◇ ◇

「ふう……」

 ここは白徳妃の部屋の隣。白徳妃の命を受け、浩国へ盛る薬を届け終わり一段落した薬師が椅子に座り休んでいた。
 そこへ、春蘭の指示を受けた薬師が2人、部屋に入って来る。

「失礼します。金貴妃様がお呼びでございます」
「!」

 薬師はすべてを悟った。しかし嘘をついてそれがバレたらより重罪になってしまう。かといってすぐにバレてしまえば証拠を廃棄する時間がない。
 考えた末彼女はしらばっくれる事を決めた。バレる前に証拠品を全て廃棄すれば良いだけの事だからだ。

「あなた、顔色悪いけど大丈夫?」
「え、ええ……大丈夫よ……私は悪くない。私は悪くない」
「どうしたの?」

 呼びに来た薬師の質問に答える事は無く、薬師は春蘭のいる栄華宮へとよろよろした足取りで向かって行った。