春蘭の胸の真ん中付近がじわじわと痛みだす。これは辛いからだというのは勿論春蘭は理解していた。
 浩国のややうつろな目には光が無く、そしていきなりの態度急変。振り返れば振り返る程これはただ事ではない。浩国の本心ではないと春蘭の考えは傾いていく。
 自室へと戻って来た春蘭は胸の痛みにふたをして女官へ宇翔を呼ぶようにと指示を出した。しかし女官からは宇翔はこの所休暇を取っていると告げられる。

「そうなの?」
「はい。そのようで……」
(そういえば最近見てなかったような……婚儀の宴でも姿が無かったような)
「ねえ、宇翔の家わかる? そこに行ってここへ来るように言ってきて」

 春蘭からの指示に女官はかしこまりました。と返事をして飛んでいくように姿を消した。
 その後、帰還した女官から衝撃の情報がもたらされる。

「宇翔様が何者かに監禁されておりました……! 家の扉が少しだけ開いていたのでくぐって中に入ったら、両手を縄に縛られておりまして……」
「ええっ?!」
「なので今、兵士達に報告してきた所でございます……! もう助け出されるかと」
「そうだったんですか……大丈夫かな……」

 家の中で召使共々両手を縄に縛られ監禁状態にあった宇翔は、すぐさま女官が呼んだ兵士達によって救出された後、宮廷内にある医者の詰所で静養する事となった。すっかり日が落ちた夜、春蘭は女官達を連れて彼の元へと向かう。