その翌々日の午前の事。朝食を食べ終わりのんびりしていた春蘭に驚きの情報がもたらされた。

「えっ、私が貴妃に昇格するんですか?!」
「はい。皇帝陛下の思し召しとの事で……」
(うそっ賢妃から貴妃に昇格するんだ……この私が……)

 貴妃は皇后の下、四夫人の一角であり、四夫人の中でも最も高い位に位置する妃だ。ちなみに現在、貴妃の位は空位となっている。

(そっか。この世界でも既にあの子はいないんだ)
 
 ゲーム内では作品の冒頭部分にて(ヂァン)貴妃というキャラクターが登場する。主人公である武雪とよく似た顔つきをしている彼女だが病で亡くなってしまうのだ。
 なお、武雪と鄭貴妃は親戚関係という繋がりは特にないが、時折シナリオで似ていると評される事がある。まあ、他人のそら似というものだろう。春蘭もとい花音はこの2人はそこまで似ているとは思っていなかった。

「そして、陛下曰く賢妃に昇格させたい妃がいれば、申すように。とのことでございまして……」
(いいの?! そんな大事な選択私に丸投げしても!)

 しかし、春蘭は覚悟を決めた。

(あの子しかいないよね)