「発生源を調べよ。そして所持者は捕縛するように」

　浩国の近くで待機していた宦官達が素早く退去していった。そして周充儀も雪達女官を連れて部屋から去っていこうとする。

「周充儀。なぜ陛下がこちらにいらっしゃるとわかったのですか？」

　春蘭からの声に、周充儀は両肘を手で押さえるような構図をしながら口を開いた。

「たまたま栄華宮の近くにいましたら、陛下が来ていると知ったのですわ。やけに人が多いなと思っていたら……」
「なるほど。たまたま近くにいらしたのですね」
「ええ。とにかくこの事態は早く解決しなければなりませんわね。だって馬族の族長である麗美様と将軍である雄力様との婚儀の日取りが差し迫っているのですから」

　きっと周充儀の目線が厳しいものに変化する。

「この婚儀は滞りなく行われなければなりません。もし何かあればまた馬族との戦闘に発展しかねませんわ」
「そ、そうですよね……」
「ええ。金賢妃様。こういう時こそ陛下へ温かいご飯を作るべきだと思いますの」

　本来ならばライバルであろう春蘭へ対し、温かい言葉をかけた周充儀に春蘭はありがとうございます。と言って頭を深々と下げたのだった。