だが、杞憂に終わり、もてなしを受けたからこそ彼女の心にある壁が崩れていったのだった。

「春蘭様は不思議な方ですね」
「そうでしょうか? ただ、料理を作って振る舞う事にやり甲斐があるだけですよ?」
「陛下へ、ですか?」

 びしっと言い当てられた春蘭は、正直に陛下含め、皆様へ……。と告げる。

「そう言えば陛下はひょろひょろした体型だったはずですけれど、見違えていましたね。それもあなたが?」
「はい。そうです」
「へえ……胃袋を掴んだのでございますか」

 麗美の言葉に春蘭はいやいや……。と遠慮しながら笑みを見せたのだった。
 
(そう言う計画だからね)

◇ ◇ ◇

 完成した夕食の品々は、和気あいあいとした雰囲気で頂いた。
 葱油餅は意外と白米に合う味わいをしているなと春蘭はもしゃもしゃと食べながら感じている。

「陛下、お味はいかがですか?」
「ああ。美味しいぞ」
(しゃぶしゃぶ用の豚肉で野菜を巻いて炒めたやつ、もう完食してる。美味しかったんだな)

 食事が終わり、兵士達が剣舞を踊り始めた。

「……春蘭。俺はここで失礼するよ」
「陛下?」
「少し休んだら、また身体を動かそうと思ってな。部屋の中でも出来るような何か良い案はあるか?」