春蘭は麗美から作り方を教わりつつ、別の品々も料理人と共に作っていく。
 その間、彼女にはある質問をしていた。

「本当に、雄力さんでよろしいのですか?」

 春蘭からの問いに麗美は少しだけ黙り込んでしまう。しかし彼女は意を決したかのように口を開いた。

「あの方なら、信用出来ると思ったので」
「そうでしたか……確かに雄力さんは真っ直ぐな方でございます」

 ゲーム内では雄力は浩国を追いかけ回す事はあれど誰かを騙すような真似はしないキャラクターだ。

「馬族はこれまで、彩国と何度か戦ってきました。だから正直信用するに値しないとは考えてきましたが、あなたや雄力殿と今回やりとりしてみて、そのような事は無いのかもしれないと思ったのです」

 特に春蘭が料理を振る舞ったのは、麗美にとっては大きな衝撃だったようだ。

「普通ありえませんよ。帝の妃が自ら料理を作って客人に振る舞うだなんて」
「そ、そうなのですか?」
「ええ。ですから内心驚いていました。罠じゃないかと」

 確かに春蘭が昼食を作ると言っていた時、麗美はこう言っていた。

 ――春蘭様。まさか毒は盛ったりしませんよね?

 彼女の毒を盛って我々を殺そうとしているのではないか? という疑念は杞憂に終わる事になる。