謙遜する麗美に悪女らしい風格は一切なく、ただ年相応の女性のような雰囲気だ。

「麗美様。夕食は、何を作りたいですか？」
「ああ……私の好物でも構わないんですか？」
「はい。もちろんでございます！」
「それなら……葱油餅(ツォンヨウピン)ですね。鍛錬が終わった後、おやつ代わりに優しい祖母がたまに作ってくれていましたので」

　葱油餅は日本で言う所のお好み焼きのような料理である。薄めの生地の上に葱と油、塩を混ぜ合わせて鉄板で焼き上げるというものでB級グルメな料理だ。麗美から一通り説明を受けた春蘭は、頭の中で献立を考える。

（作り方はよくわからないし、麗美様に聞いてみようかな。後はお味噌汁があれば喜んでくれるかも。それと野菜の和え物とか）

　ぜひ作り方を教えてください。と春蘭が麗美にお願いすると、彼女は快く引き受けてくれたのだった。

「では、よろしくお願いします。麗美様」
「ええ」