やや不満げな麗美の声が広間中を侵食していく。だが浩国と春蘭は彼女の声にひるむ事は無かった。

「そなたは馬族の族長だ。高位の者をこちらから出せば、こちらもそなたも立場は苦しくなる」
「そうですよ。あなただって族長はまだ辞めたくないはずです」
「お二方とも痛い所を突いてきましたね……確かに私はまだ族長の座を降りる訳にはいきますまい。しかしながら同胞の為に戦っている我らにとって、それくらいしないと和睦停戦には応じられませんね」

 麗美からは譲る気が無いのが見て取れる。
 ここで雄力ががたっと椅子から立ち上がった。

「麗美殿。俺で良ければ結婚してください!」

 いきなりの宣言に、広間にいた者すべてが凍り付いたかのように静まり返った。勿論春蘭も口をパクパクさせているが言葉が出てこない。
 そんな中最初に口を開いたのは浩国だった。

「雄力……正気か?」
「ええ、陛下。これはもう俺……いや、私しかできますまい。麗美殿が私をお嫌いでなければ……」

 麗美を見てみると彼女は頬を赤く染めていた。どうやらまんざらでもないようだ。

(うっそここで雄力と麗美のカップルが成立するの?!)

春蘭はただただ雄力と麗美を交互に見るだけだ。覚悟の定まった表情をした雄力に乙女のような可愛らしい微笑みを浮かべた麗美に春蘭は現実だと受け入れる事が中々できないでいる。