「麗美様。お鍋はこれで終わりではございませんよ」
「え?」
(鍋と言えばやっぱり〆が無いとね)

 鍋に具材が無くなったのを見計らってから鍋を全て回収し、厨房にて再び火にかけるとご飯をぽいぽいっと入れていく。

(海老も入れたから良いだしが出てそうだ)

 火がしっかり通り、どろっとした見た目になったら完成だ。

「お待たせしました。雑炊でございます。熱いのでお気を付けくださいませ」
「へえ、雑炊を作ったのですか? 鍋の残りのだしで」
「はい、麗美様。きっと喜んでいただけるかと思います」
「自信ありげね、じゃあ頂くとしましょうか」

 小皿によそって冷ましてから、白いレンゲを使っていただいていく。麗美が雑炊を口の中に入れた瞬間、ん! と声を挙げた。

「……美味しいわ。だしの風味がご飯にしっかりしみ込んでいる」

 麗美はほっと息を吐くと、レンゲでひと口分雑炊をすくうと、また口の中に頬りこんだ。咀嚼する彼女の顔は朗らかなものとなっている。

「美味しい。いくらでも食べられるくらい」
「お喜び頂けて何よりです」
「春蘭様は本当にお料理が得意でいらっしゃるのですね。私の母親が私の具合が悪い時によく雑炊を作ってくれていたのを思い出しました」