水気をしっかり切った豆腐に竹串を刺す。味噌に砂糖とみりんを少し入れ、更にほんのちょっとだけ、唐辛子がメインの粉末型香辛料をふりかけて混ぜていく。
 なぜ辛味を足したかと言うと、麗美の温かいものが好きという言葉を受けての事である。また豆腐だけでなく茄子も薄めに切って豆腐同様に串刺しにした。

「うん、いい感じ」

 豆腐と茄子に調味料を混ぜた味噌を塗り、焼けたら陶磁器のお皿に2本ずつ並べていく。

(これは前菜という事にしよう。まだ鍋料理が時間かかりそうだし)
「すみません、こちら皆様へお願いします」
「かしこまりました。金賢妃様」

 女官達が料理を運んでいく間、春蘭は沸いてくるアクを取り、火加減を少し弱める。春雨を鍋から1本取って試食し硬さの確認も忘れない。

(あと、3分くらいかな……)

 春雨は柔らかめに茹でるのが彼女流。前世の幼少期にて春雨サラダを食べた際に、春雨が硬かった為に消化不良で下痢を起こしてしまった事が由来だ。
 数分後、もう一度春雨を試食し十分柔らかくなったのを確認してから火を止めて、浩国や麗美達の前へと持っていく。

「皆様。お待たせいたしました。雨も降っておりますしどうぞ鍋料理で温まりください」