「あら、あなたは……」
「金春蘭と申します。お会いでき光栄に存じます」
「春蘭ですね。私は麗美。好きに呼んでくれて結構ですよ」
「ああ、そうだ。麗美殿。そこにいる春蘭があなた方に料理を振舞いたいと言っていてな」

　何も予兆も無くいきなり話題をぶっこんでくる浩国に春蘭はええっ?!　と変な声を出してしまった。

「へえ……春蘭様はお料理が出来るのですか？」

　麗美はやや食い気味で机に両肘を乗せて手を組みながら、春蘭に視線を向ける。

「そ、そうなんです！」
「春蘭の料理は美味しいのだ。俺の嫌いな食べ物も食べれるようになったくらいだからな」
（ぐっ、なんか私……浩国に利用されている気がする……）

　自慢げに笑みを浮かべる浩国と、興味を持つ麗美とその配下達は皆揃って春蘭をじっと見つめていた。

（そんなに見ないでほしいんだけど！）
「あ――、その、麗美様。好きな食べ物ってありますか？」
「ああ、私はやはり鍋料理のような温かい食べ物ですね。皆は？」

　配下達も鍋でお肉を煮込んだもの！　だとか、水餃子入りスープ！　だとか次々に顔をほころばせながら答えていく。
　それまで怖さをたっぷり表していた顔つきがいつの間にか乙女のような可愛らしいものへと変貌を遂げていた。