春蘭は皇帝らしく着飾った浩国と共に建物の外に出て馬族の者達を迎え入れる。そんな馬族達の先頭に立って率いるのは、黒い馬に跨り黒ずくめの兵装をあでやかに着こなす麗美だった。

(来た、麗美……!)

 入城し、馬から降りた麗美は、かつかつと靴音を鳴らしながら早歩きで浩国の元に歩み寄る。彼女が出す圧に春蘭は少しだけ後ずさりしてしまう程だ。

「此度は陛下にお会いでき、光栄でございます」

 彼女の芯のある声が春蘭の鼓膜を揺らした。麗美の表情自体はにこやかだが、その黒い目の奥には殺気めいたものもあるように見える。

「麗美殿、長旅お疲れ様でございました。どうぞ中へ」

 浩国が敬語を使い、麗美をもてなす。麗美は浩国に促され、大柄な部下達を引き連れて屋敷の中へ入っていく。彼女達の様子を春蘭は後ろから眺めながら、中へと入っていったのだった。
 大広間には朱塗りの美しい長机と椅子が配置されている。

「どうぞ、おかけください、麗美殿」
「では、陛下のお言葉に甘えて……」

 皆、席に着いたところで交渉の場が始まる。ぴんと張り詰めた空気は春蘭の身体へ冷気となって襲い掛かった。

(ドキドキする……!)