「これが、料理本ね。どれどれ、宮廷料理をまとめたものか」
「さようでございます。金賢妃様」
(すんごい分厚い。あと思ったよりも工程が簡単なメニューも結構あるのね)

 その時。春蘭の脳裏にはある考えがよぎる。

(……浩国はこういう豪華な料理をいつも食べてるのかな? いや、もし全部食べていてあの身体の細さなら代謝系の病気っぽい気がするけど……)
「ねえ、皇帝陛下はいつもこのような豪華なお料理をお食べになられて……いるの?」

 女官達は互いにきょろきょろと顔を見合わせた。

「いえ、実は……陛下は偏食がひどく、更には激務という事もあって普段からあまり食事はされないのです」
「え?!」
(そんな設定あったっけ?! 皇帝だから忙しいのは当たり前だろうけど……偏食だったの?!)

 春蘭は驚きのあまり目を大きく見開く。

(もしかして、私がその偏食設定を知らないだけか?! 私、浩国は持ってなくて攻略した事ないから!? え――どうしよ、手元にスマホは無いから確かめようがない!)

 頭を抱えうなる春蘭を見て心配した女官達は、慌てふためきながらお薬をご用意いたしましょうか? とかお水を飲まれますか? などと次々に声をかける。

(あ、まずい。燃えあがってた……)
「や、大丈夫です……ちょっと考えこんでただけです……」