放課後には、よくお出かけをした。

 夕飯までには帰らないといけないので遠出はできなかったし、僕はおこづかいも少ないので行けるところは限られていたけれど。

 一方のまりかさんは帰りが遅くなってもかまわないようだった。
 家に帰っても誰もいないと、彼女は言っていた。
 おこづかいもたくさん持っていたので、場合によってはお金を出してもらうこともあった。

 ある日はお街に出かけた。
 数えきれないほどの人々が行きかう往来でも、まりかさんは注目を集めることなく人ごみを歩いていった。

「これってさ、周りの人にはどう見えてるの?」

「普通の中学生に見えてるよ。魔族には幻を見せる力があるのです」
 まりかさんは、ふふんと得意げに笑ってみせた。

「なんで僕にはきかないんだ」

「え、うーん。こころが魔族に近いから?」
 と、彼女は首をかしげながらそうこたえた。

 僕たちは街なかで見つけたネコを追いかけて、ビルのすき間を抜けていった。

「あのネコは魔族の使い魔だよ。魔界の入り口を知ってるの!」

「なんかネコについていくと別の世界に連れていかれそうな気がするよね」

「わかる! ほら、そっち行った。逃げられちゃうよ!」

 見事ネコを見失った僕たちは、休憩のため駅前のマクドナルドに入った。
 うちに帰れば夕飯があるし、お金はないので、僕はSサイズのコーラだけを頼んだ。
 まりかさんは贅沢にもビッグマックのセットを頼んで、ドリンクもポテトもLサイズにしていた。

「半分こしよ!」

 というまりかさんの厚意に甘えて、僕もポテトをつまんでいたときのことだ。
 窓に向かって座っていた僕たちの目の前で、嫌なことがおきた。

 ピアスだらけの男の人と、黄色に近い金髪の男の人が、おとなしそうな女の人にしつこくからんでいたのだ。
 厚い窓ガラスを挟んでいて、僕たちに実害はないけれど。

「ああいうのって、見ているだけで嫌な気分になるね」

「わかる」

 と言ったまりかさんは、右手を銃の形にかまえた。

「ばんっ」

 その瞬間、ピアスの人が身につけていたショルダー・バッグが弾けとんだ。

「ばんっ」

 まりかさんが二発目を撃つと、金髪の人の髪の毛が全部勢いよく飛びちった。

 二人はパニックに陥った。
 周りの人も二人を取りかこんでざわざわと騒いでいる。
 そのすきに、女の人は足早に歩き去っていった。

「ふっ」

 人さし指の先に浮かぶ見えない煙を吹いたまりかさんは、どうよといわんばかりの得意げな顔で僕を見た。

 いや、気持ちはわかるけど危ないって。