窓の外で大きな音がした。
 どーんと重い破裂音。
 かたかたと揺れる窓ガラス。

「なんの音?」
 通話口の向こうで綾が訝しむ。

「ちょっと待って」

 カーテンを開けると、いつの間にか外は夕暮れどきになっていた。
 綾と作業通話を始めたのが昨日の深夜だから、かれこれ一七、八時間は描きつづけていたことになる。
 もう肩も腰もぴきぴきだ。
 石化したように固まっている。

 と、宵闇に光の花が咲いた。

 再びの轟音。
 伝わる振動。

「花火だ。そういえば今日だっけ。うちの近くの河原で花火大会があるからいっしょに行こうって話してた気がする。……げ」

 スマホを見てみると、またまたとんでもない数の通知が積み上がっていた。

「やば。三智たちいま河原にいるみたい」

「じゃあ、あたしたちも行こうよ」

「絵はいいの?」

「取材よ、取材」
 それだけ言って綾は通話をきった。