ある木曜日の夕方、いきなりLINE通話がかかってきた。
 レポートを書くのに集中していたせいもあって、わたしはまちがえてその通話にでてしまった。

「なんでDiscord入ってないの。暇でしょ」

 かけてきたのは綾だった。
 あいさつもなくいきなり決めつけてかかってくるこの感じ。昔と何も変わらない。

「いまレポートで忙しいの。じゃあね」

 通話をきる。
 またかかってくる。

「わざわざLINEすんのがめんどくさいんだけど」

「じゃあ通話かけてくんな」

「早くサーバ入ってよ」

「Discord入れてないからムリ」

 綾は通話中の耳もとで、遠慮なく舌打ちをかましてきた。

「アンタそれやめろっていつも言ってんじゃん」

「どうせ暇なんだから、さっさとインスコしてよ」

「だから暇じゃないっつってんでしょ」

 通話をきる。
 またかかってくる。

「こないだも朝まで遊んでたんでしょ」

「なんでそんなこと知ってんの」

「大学生は暇でいいね」

「だからそのぶんいま忙しいんだって」

「明日でいまやってる仕事が終わるから、取材したいの。大学生らしい遊びを教えて」

「そういうのは豊岡にいって」

「わかった。じゃあよろしく」

 通話がきられる。
 またかける。

「わたしに中継させんな! 自分でたのめ!」

「うっざ。あたしいまから作業なんだけど。じゃましないでよ」

 通話がきられる。

 もういいから、このまま縁もきってくれ。

 無視しても面倒なことになるだけなので豊岡に丸投げしたら、ヤツからは『うぇーい』という文字つきのゴミみたいなスタンプが送られてきた。

 おまえこないだの徹夜明けに見せた大人びた顔はどこへやった。
 二度と寝るな。
 常に朝マックのテンションでいろ。