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 それからおよそ二ヶ月。

 二学期の期末テストの結果は、いまもまだ掲示されつづけている。
 次にここの掲示物が差しかえられるのは、学年末テストの結果が出たときだ。

 二ヶ月間、ずっと俺の恥が晒されつづけている間、佐久間とはひと言も交わしていない。
 機会もなかったし、そもそも話をするつもりもない。
 そして向こうも俺には目もくれない。

 佳。
 あのときはおまえの言にも一理あると思ったけれど、やっぱり俺は佐久間の眼中にはないと思うぞ。

 と、そのとき。
 白い影が空から舞いおりてきた。

 鳥……カラスか。
 真っ白なカラスが高度を下げ、グラウンドに立つ怪盗さんの腕にとまった。

「え、ひょっとして仲間ってそのカラス?」

 俺が指さすと、白いカラスは人間みたいな声で「カー」と返事をした。

「僥倖だ。入り口があったぞ、夏焼宏樹くん」

 怪盗さんが歩を進めると、カラスは静かに飛びさった。

「行くって、どこに?」

 横にならびかけながら問いかけると、怪盗さんは親指でうえをさした。

「屋上だ」