「理性保ってらんないな、もう……」
お風呂に入ると、圭一は頭を掻いた。彼が何を考えてるのか分からなくて、少し不安になる。
怒ってる? とは、ちょっと違うか。
こちらの様子に気付いたのか、圭一は苦笑して身体を離した。
「ごめん。湊があんまり可愛すぎるから」
「何言ってんだよ……」
いつもと同じで安心したけど……でも、そうじゃなくて。
「可愛いとかじゃなくて、……好きって言ってよ」
頑張って振り絞った声は、本当に小さかった。
「え? なになに、急に改まって」
普段なら絶対言わないようなことを言っちゃったから、圭一はニヤニヤしながら食いついてきた。
あー、やっぱ言うんじゃなかった……。
思わず片手で顔を隠すけど、簡単に引き剥がされる。
「湊、もう一回言って」
「やだ」
「じゃ、言ったら何でもする」
圭一は屈んで、俺と同じ視線になった。
「……っ」
真正面から見つめられたら、例え自分じゃなくても大抵の奴は落ちると思う。
本当、それぐらいのイケメンだった。出会った時はド変態のドSだったくせに。
でも……。
「いや、違うんだ……何もしなくていいよ。一緒にいてくれれば」
震えそうになりながら、彼の瞳をとらえる。
「でも好きって言ってもらえたら、正直ほっとする」
やばい。我ながら何て怖いセリフだ。
でもやっぱり、そんなセリフが変態の彼には高評価らしい。急に真面目な顔でキスしてきた。
「分かった。でも強いて言うなら……俺は湊が好きなんじゃなくて、愛してる」
「……っ」
好きって言ってほしかっただけなのに、何でまた斜め上を行く返事をするんだろう。
それがまた、クセになりそうなんだけど。
「昨日とおんなじ、他に誰もいないね」
何か照れくさかったからちょっとだけ笑うと、彼は本当に嬉しそうに頷いた。
もうその笑顔が見れただけで、最高の旅行だった。