ロコさんは慌てて席に座りなおすと、ゆっくりと語り始めた。
「そういえばね、実は私、この場所には約束の三十分前には着いていたの」
「えっ、そうだったんですか?」
私が驚いていると、ロコさんは照れたように笑った。
「ええ。でも恥ずかしくてシオさんが来るまで隠れていたの。シオさんのことはすぐ分かったわ。だってタケルくんのパネルに真っすぐに向かって行って夢中で写真を撮っていたもの」
「み、見てたんですか⁉」
まさかそんなところを見られていただなんて。
顔がかあっと熱くなる。
恥ずかしすぎる~!
「ええ。でもなかなか声をかけられなかったわ。だって私よりずっと若いし美人で可愛らしかったから」
「そ、そんなことないですよ。もう三十代ですし!」
私が慌てて言うと、ロコさんは首を横に振った。
「まだ三十代じゃない。いいわね。これから何でもできるし、何にだってなれるわ」
「そ、そうでしょうか」
「そうよ。まだまだ私より体力も気力もあるし」
そうかなあ……。