「わあ」

 中に入ると、そこは記憶通りの、パステルカラーの可愛らしい店内だった。

 ただ一つ違うのは、壁に推しのポスターが大きく飾られていること。

「み、見て。あそこにレイくんがいるわ!」

 ロコさんが壁を指さし、声を震わせる。

「こんなに大きく写真が飾られるほど人気になったのね……」

 よほど感動したのか息を詰まらせるロコさん。

 本当にレイくんのことが好きなんだな。

「それじゃあ、ここに座りましょう」

 私がレイくんの写真の下の席を提案すると、ロコさんは目を大きく見開いた。

「良いんですか⁉」

「ええ、タケルくんの席は他の人に座られてるし」

 私がタケルくんの写真のそばの席を指さすと、ロコさんは小さく「ありがとうございます」と頭を下げ、レイくんの写真のそばに腰かけた。

「レイくんいてよかったですね」

 私が言うと、ロコさんは身を乗り出して入り口を指さした。

「ええ、入り口の等身大パネルはレイくんがいなかったものね」

 スマイルボーイズは九人組グループだけど、入り口のパネルは私の推しのタケルくんを含め年上の三人だけだったんだ。

「……と。あらごめんね。良い年したおばあちゃんが取り乱しちゃって」