そして約束の日。指定された入り口で緊張しながらロコさんを待つ。

 ロコさんにイメージと違うと幻滅されないように、若作りではないけれど年相応に綺麗めなスカートを履いた。

 気合の入ったばっちりメイクに髪も巻いた。

 デートでもライブでもこんなに気合意を入れたことはない。

 せっかくできたロコさんという友達に幻滅せれたくない一心だった。

 ……ロコさん、もう来てるかな。どこだろう?

 私がキョロキョロと辺りを見回していると、ちょうど推しの等身大パネルと目が合った。

「きゃあ、タケルくん可愛いっ!」

 夢中で写真を撮っていると、後ろから声をかけられる。

「あのー、シオさんですか?」

 心臓がドキリと跳ねあがる。

『シオ』というのは私のハンドルネーム。

 本名の詩織から取った名前とはいえ、学生時代のあだ名は『しおりん』だったし、『シオ』と呼ぶのはネット上で知り合った人だけのはず。

 ということは……。

「ロコさん⁉」

 と、振り返って驚く。

 そこにいたのは、六十代後半か七十代くらいの上品な老婦人だったから。

 え……ええええっ⁉

 この人がロコさん⁉