「飲食チェーンですし、制服があるから大丈夫なんじゃないですか。あれできちんとTPOはわきまえてるんですよ」
「へぇ……、そうなんだ」
彼はお兄さまの話題になると、何だかご機嫌ナナメだった。……あれ、おかしいな。兄弟の仲はいいはずなのに。
「あのね、桐島さん。もしかして、お兄さまにヤキモチ焼いてる? だとしたらホントに心配いらないからね? お兄さま、彼女がいらっしゃるらしいから」
「彼女、いるんですか? ……何だよもう、兄貴のヤツ! 話してくれたっていいのに、水臭い!」
そのせいで余計な心配しちまった、とか何とか独り言をブツブツ言い出し、わたしの顔を見るや「……すみません」と小さく謝った。
姉妹ならきっと、お互いの恋愛の話をよくするだろうけど、兄弟だとそういう話はあまりしないんだろうか?
でも、悠さんは貢の恋バナをよく聞かされていたはず。なのにご自身の恋愛については貢に話されないというのはどういうことだろう? ……まぁ、延々ノロケ話を聞かされても迷惑だろうけれど。
* * * *
――タワーの天望デッキに着くと、休日のせいか前に行った時より人でごった返していた。時刻は夕方五時。ちょうど夕日が沈み始めた頃で、西側の窓辺はキレイな夕焼けの写真をSNSにアップすべくスマホをかざす女の子のグループやカップルたちで賑わっていた。
「――ホントは、こんな人が大勢いるところで言うようなことじゃないと思うんだけど……。昨日はライン、返事返さなくてごめんなさい!」
わたしは開口一番にそのことを彼に謝った。弁解ならその後にすればいい。まずは自分に非があったことを認めて詫びるべきだと思った。
「でもね、それにはちゃんと理由があるの。……最初のメッセージで返信しようとしたら、その後あんなこと書かれるんだもん。わたし、どう返していいか分かんなくなっちゃって。ただ、それは怒ってたわけじゃなくて、気が動転してたっていうか、パニクってたっていうか……。とにかく頭の中が真っ白になっちゃってて」
「そうだったんですか。僕はてっきり、絢乃さんがヘソを曲げちゃったんで返事を下さらないのかと思ってました。で、それからずっと自己嫌悪に陥っていて、『もう顔も見たくない』、『声も聴きたくない』と言われてしまったらどうしようかと。なので、先ほどお電話を下さった時は驚きましたけど嬉しかったです」
「へぇ……、そうなんだ」
彼はお兄さまの話題になると、何だかご機嫌ナナメだった。……あれ、おかしいな。兄弟の仲はいいはずなのに。
「あのね、桐島さん。もしかして、お兄さまにヤキモチ焼いてる? だとしたらホントに心配いらないからね? お兄さま、彼女がいらっしゃるらしいから」
「彼女、いるんですか? ……何だよもう、兄貴のヤツ! 話してくれたっていいのに、水臭い!」
そのせいで余計な心配しちまった、とか何とか独り言をブツブツ言い出し、わたしの顔を見るや「……すみません」と小さく謝った。
姉妹ならきっと、お互いの恋愛の話をよくするだろうけど、兄弟だとそういう話はあまりしないんだろうか?
でも、悠さんは貢の恋バナをよく聞かされていたはず。なのにご自身の恋愛については貢に話されないというのはどういうことだろう? ……まぁ、延々ノロケ話を聞かされても迷惑だろうけれど。
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――タワーの天望デッキに着くと、休日のせいか前に行った時より人でごった返していた。時刻は夕方五時。ちょうど夕日が沈み始めた頃で、西側の窓辺はキレイな夕焼けの写真をSNSにアップすべくスマホをかざす女の子のグループやカップルたちで賑わっていた。
「――ホントは、こんな人が大勢いるところで言うようなことじゃないと思うんだけど……。昨日はライン、返事返さなくてごめんなさい!」
わたしは開口一番にそのことを彼に謝った。弁解ならその後にすればいい。まずは自分に非があったことを認めて詫びるべきだと思った。
「でもね、それにはちゃんと理由があるの。……最初のメッセージで返信しようとしたら、その後あんなこと書かれるんだもん。わたし、どう返していいか分かんなくなっちゃって。ただ、それは怒ってたわけじゃなくて、気が動転してたっていうか、パニクってたっていうか……。とにかく頭の中が真っ白になっちゃってて」
「そうだったんですか。僕はてっきり、絢乃さんがヘソを曲げちゃったんで返事を下さらないのかと思ってました。で、それからずっと自己嫌悪に陥っていて、『もう顔も見たくない』、『声も聴きたくない』と言われてしまったらどうしようかと。なので、先ほどお電話を下さった時は驚きましたけど嬉しかったです」