――わたしと〈U&Hリサーチ〉の二人で決めた作戦は、小坂リョウジさんの裏アカウントにDMを送り、真弥さんがそのアカウントをハッキング。彼をウソの誘い文句でおびき寄せて二人で会っているところを真弥さんに乗っ取った彼の裏アカでライブ配信してもらい、彼が本性を現したところでそのことを彼に暴露するというもの。よくTVのバラエティーでやっているドッキリ企画に近いかもしれない。
万が一のことを考えて、わたしは内田さんと真弥さんと連絡先と名刺を交換した。貢の携帯番号も教え、わたしの身に危険が迫った時には最終手段として彼に知らせてほしい、と内田さんにお願いした。
この作戦については話していないけど、調査については貢にも伝えてあった。調査料金として五十万円を支払ったことには、「そんな大金を払ったんですか!? 絢乃さん、金銭感覚バグってるでしょう絶対!」と呆れられた。わたし自身もそう思うけれど、彼を守るためなら一億円出したっていい。彼の存在は、決してお金には代えられないから。
顧問弁護士である唯ちゃんのお父さまにも、小坂さんを訴える準備をして頂いた。真弥さんにもらった調査内容はその証拠としてお預けした。ただ、正規ではない手段で手に入れた情報なので証拠能力がどうなのかは分からないけれど……。
――そして、作戦決行の日が来た。
その日は土曜日で、貢には前もって「ちょっと用事があるから」とデートの予定を外してもらった。
内田さんの事務所を訪れてから決行日までの数日間、わたしの様子がおかしかったことは彼も気づいていたかもしれない。もしかしたら彼は、わたしの浮気を疑っていたかもしれないけれど、その心配なら皆無だ。内田さんには真弥さんという可愛い恋人がいるわけだし、わたしには貢しかいないのだ。
SNSでの誹謗中傷は、もうこのネタが飽きられていたのかパッタリ止んだ。その代わり、真弥さんが調べてくれた小坂さんのある情報が、Xで拡散されていった。彼はお付き合いしていた女性と破局するたびに、リベンジポルノを仕掛けていたらしいのだ。――これもまた、作戦の一部だった。
普段よりちょっと露出度高めの服装をして、わたしは新宿駅前でターゲットを待ち構えた。少し離れた場所では、スマホを構えた真弥さんと内田さんも待機していた。
「――初めまして、かな? 篠沢会長。こないだはDMありがとう」
「……どうも、初めまして」
こちらの思惑どおりに待ち合わせ場所へノコノコやってきた小坂さんは、すでに化けの皮が剥がれているとは知らずに俳優らしい爽やかな笑顔をわたしに向けた。
彼は二十四歳。年回りだけでいえば、貢より彼の方がわたしとバランスが取れている。……あくまで年回り「だけ」の話だけれど。
「いやぁ、まさか君が俺に会いたがるなんてねぇ。俺もそれだけ有名になったってことかな。CMでの共演断られたから、俺に会いたくないのかと思ってた」
「別にそんなことないですよ。それはそれ、これはこれですから」
……本当は、こんなことがなければお会いしたくなかったですけど。本心ではそう思いながら、それを表に出さないようわたしも作り笑顔で応えた。
万が一のことを考えて、わたしは内田さんと真弥さんと連絡先と名刺を交換した。貢の携帯番号も教え、わたしの身に危険が迫った時には最終手段として彼に知らせてほしい、と内田さんにお願いした。
この作戦については話していないけど、調査については貢にも伝えてあった。調査料金として五十万円を支払ったことには、「そんな大金を払ったんですか!? 絢乃さん、金銭感覚バグってるでしょう絶対!」と呆れられた。わたし自身もそう思うけれど、彼を守るためなら一億円出したっていい。彼の存在は、決してお金には代えられないから。
顧問弁護士である唯ちゃんのお父さまにも、小坂さんを訴える準備をして頂いた。真弥さんにもらった調査内容はその証拠としてお預けした。ただ、正規ではない手段で手に入れた情報なので証拠能力がどうなのかは分からないけれど……。
――そして、作戦決行の日が来た。
その日は土曜日で、貢には前もって「ちょっと用事があるから」とデートの予定を外してもらった。
内田さんの事務所を訪れてから決行日までの数日間、わたしの様子がおかしかったことは彼も気づいていたかもしれない。もしかしたら彼は、わたしの浮気を疑っていたかもしれないけれど、その心配なら皆無だ。内田さんには真弥さんという可愛い恋人がいるわけだし、わたしには貢しかいないのだ。
SNSでの誹謗中傷は、もうこのネタが飽きられていたのかパッタリ止んだ。その代わり、真弥さんが調べてくれた小坂さんのある情報が、Xで拡散されていった。彼はお付き合いしていた女性と破局するたびに、リベンジポルノを仕掛けていたらしいのだ。――これもまた、作戦の一部だった。
普段よりちょっと露出度高めの服装をして、わたしは新宿駅前でターゲットを待ち構えた。少し離れた場所では、スマホを構えた真弥さんと内田さんも待機していた。
「――初めまして、かな? 篠沢会長。こないだはDMありがとう」
「……どうも、初めまして」
こちらの思惑どおりに待ち合わせ場所へノコノコやってきた小坂さんは、すでに化けの皮が剥がれているとは知らずに俳優らしい爽やかな笑顔をわたしに向けた。
彼は二十四歳。年回りだけでいえば、貢より彼の方がわたしとバランスが取れている。……あくまで年回り「だけ」の話だけれど。
「いやぁ、まさか君が俺に会いたがるなんてねぇ。俺もそれだけ有名になったってことかな。CMでの共演断られたから、俺に会いたくないのかと思ってた」
「別にそんなことないですよ。それはそれ、これはこれですから」
……本当は、こんなことがなければお会いしたくなかったですけど。本心ではそう思いながら、それを表に出さないようわたしも作り笑顔で応えた。