――翌日の放課後、わたしは制服のままで新宿にある〈U&Hリサーチ〉の事務所を訪ねた。事務所は一階にコンビニが入っている三階建て雑居ビルの二階にあった。
ドア横の呼び鈴を押すと、ドアがガチャリと開いて顔を出したのはわたしと同い年くらいの女の子だった。身長は百六十センチくらい。ストレートの茶色いロングヘアーをポニーテールにして、パーカーにデニムのミニスカートというちょっとスポーティーな服装をしていた。
「あの……、篠沢絢乃ですけど。今日、こちらへ伺うお約束をしている」
「ああ、篠沢さんですね。あたし、この事務所のスタッフで、葉月真弥っていいます。どうぞ中へ。所長は今、下のコンビニまで買い出しに行ってます。すぐ戻ってくると思うんですけど」
真弥さんはわたしの制服姿に興味津々で、事務所内へ招き入れたあとに「まさか高校生だなんて思わなかったんで、ビックリしました」と笑いながら言った。
「電話で言わなくてごめんなさい。高校生だって言ったら、相談を受け付けてもらえないんじゃないかと思ったから」
「そんなことないですよ。ウチは零細企業なんで、お金さえ払ってもらえるなら依頼人の年齢なんか関係ないですから。――それ、茗桜女子の制服ですよね。いいなぁ」
「ええ。今三年生」
「あたし、新宿の慎英高校に通ってたんです。超がつく進学校。でも、ホントは茗桜に行きたかったんですよね。慎英には、親が行け行けってうるさいから仕方なく」
彼女はそう言って肩をすくめた。親とは折り合いが悪いらしい。
「へぇ……。『通ってた』っていうのは?」
「ああ、そこ辞めて、今は通信制に通ってるからです。二年生です。篠沢さんの一コ下」
「なるほど」
わたしが応接セットの茶色いソファーに腰を下ろしたところで、「ただいま」と野太い男性の声がした。どうやら所長さんが戻ってきたらしい。
「――ただいま」
「あ、ウッチーお帰り。篠沢さん来てるよ」
……「ウッチー」? 所長さんを呼ぶのにフランクな呼び方をするんだなぁと、わたしは小さく首を傾げた。もしかして、この二人も……?
「ああ、どうも。オレがここの所長で、内田圭介です」
「初めまして。わたし、篠沢グループの会長で、篠沢絢乃です」
真弥さんの話によると、内田さんは三十歳。身長は百八十五センチ。刑事だった頃はかなりの武闘派だったそうだ。真弥さんが十七歳なので、まぁ年の差十三歳のカップルもあり得なくはない……かな?
「まぁ、メインで調査してるのはあたしの方で、ウッチーは所長兼パシリって感じなんんですけどねー。この人デジタルオンチなもんで」
「〝パシリ〟って言うな!」
というような夫婦漫才(?)を繰り広げた後、内田さんがコンビニで買ってきた冷たい緑茶をグラスに入れて出してくれた。
「ありがとうございます」
ドア横の呼び鈴を押すと、ドアがガチャリと開いて顔を出したのはわたしと同い年くらいの女の子だった。身長は百六十センチくらい。ストレートの茶色いロングヘアーをポニーテールにして、パーカーにデニムのミニスカートというちょっとスポーティーな服装をしていた。
「あの……、篠沢絢乃ですけど。今日、こちらへ伺うお約束をしている」
「ああ、篠沢さんですね。あたし、この事務所のスタッフで、葉月真弥っていいます。どうぞ中へ。所長は今、下のコンビニまで買い出しに行ってます。すぐ戻ってくると思うんですけど」
真弥さんはわたしの制服姿に興味津々で、事務所内へ招き入れたあとに「まさか高校生だなんて思わなかったんで、ビックリしました」と笑いながら言った。
「電話で言わなくてごめんなさい。高校生だって言ったら、相談を受け付けてもらえないんじゃないかと思ったから」
「そんなことないですよ。ウチは零細企業なんで、お金さえ払ってもらえるなら依頼人の年齢なんか関係ないですから。――それ、茗桜女子の制服ですよね。いいなぁ」
「ええ。今三年生」
「あたし、新宿の慎英高校に通ってたんです。超がつく進学校。でも、ホントは茗桜に行きたかったんですよね。慎英には、親が行け行けってうるさいから仕方なく」
彼女はそう言って肩をすくめた。親とは折り合いが悪いらしい。
「へぇ……。『通ってた』っていうのは?」
「ああ、そこ辞めて、今は通信制に通ってるからです。二年生です。篠沢さんの一コ下」
「なるほど」
わたしが応接セットの茶色いソファーに腰を下ろしたところで、「ただいま」と野太い男性の声がした。どうやら所長さんが戻ってきたらしい。
「――ただいま」
「あ、ウッチーお帰り。篠沢さん来てるよ」
……「ウッチー」? 所長さんを呼ぶのにフランクな呼び方をするんだなぁと、わたしは小さく首を傾げた。もしかして、この二人も……?
「ああ、どうも。オレがここの所長で、内田圭介です」
「初めまして。わたし、篠沢グループの会長で、篠沢絢乃です」
真弥さんの話によると、内田さんは三十歳。身長は百八十五センチ。刑事だった頃はかなりの武闘派だったそうだ。真弥さんが十七歳なので、まぁ年の差十三歳のカップルもあり得なくはない……かな?
「まぁ、メインで調査してるのはあたしの方で、ウッチーは所長兼パシリって感じなんんですけどねー。この人デジタルオンチなもんで」
「〝パシリ〟って言うな!」
というような夫婦漫才(?)を繰り広げた後、内田さんがコンビニで買ってきた冷たい緑茶をグラスに入れて出してくれた。
「ありがとうございます」