「どうしたの、里歩? そんなに慌てて」
「だから大変なんだって! アンタもスマホでX開いてみて! ほら今すぐ!」
「う……うん、分かった」
何が何だか分からないままアプリを開き、彼女の言うキーワードで検索すると、トップに表示された記事にわたしは茫然となった。
「ちょっと何これ!? わたしと貢の2ショットだ。しかもこのアングル、まさか隠し撮り!?」
「みたいだね。顔はハッキリ写ってないけど、全体の雰囲気で何となく誰だか分かるっていうギリギリのアングルで撮られてる。これはちょっと悪質だわ」
里歩もすぐ横で眉をひそめ、低く唸った。これは相当怒っているなとわたしも感じたし、それはわたし自身も同じだった。
記事そのものを読んでいくと、こんな悪意に満ちた内容が投稿されていた。
〈篠沢グループ会長のスキャンダル発覚! 隣に写ってるのは彼氏か!?
大してイケメンでもないのに逆玉を狙った不届き者! 男のシュミ最悪!!
#この男見つけたら制裁 #この男は社会のゴミ 〉 ……
「何なのこれ……。誰がこんなひどい投稿を……」
しかもその投稿のコメント欄はすでに炎上していて、おびただしい数の拡散までされていたのだ。あまりの憤りに、スマホを持つわたしの手がブルブル震えた。
葬儀の日、父のことを散々コケにした親族にさえ、これほど強い怒りを覚えなかった。それは、彼らがわたしの目の前で言いたい放題言っていたから。確かに腹は立ったけど、「ああ、この人たちは所詮この程度の人間なんだな」と思えば諦めもついた。でも、この時は違った。目に見えない人からの悪意ほどおぞましいものはない。
「……この書き込みしたの、男みたいだね。絢乃、このアカウントに心当たりある?」
「ううん、見たこともないアカウント。だいたいわたし、男の人に恨まれる憶えなんて……」
「だろうね。じゃあ桐島さんはどう? アンタにはなくても、桐島さんが誰かから恨まれてる可能性はあるんじゃないの? っていうかこの投稿、明らかに彼に悪意の矛先が向いてるし」
「あ……、確かにそうだね。でも、どうなんだろ……? 彼だって人から恨まれるような人じゃないと思うけど」
「あーーーっ! この服装、豊洲のショッピングモールで会った時のだよね!?」
いつの間にか目の前に来ていた唯ちゃんが、写真に写るわたしたちの服装に気がついて雄叫びを上げた。
「だから大変なんだって! アンタもスマホでX開いてみて! ほら今すぐ!」
「う……うん、分かった」
何が何だか分からないままアプリを開き、彼女の言うキーワードで検索すると、トップに表示された記事にわたしは茫然となった。
「ちょっと何これ!? わたしと貢の2ショットだ。しかもこのアングル、まさか隠し撮り!?」
「みたいだね。顔はハッキリ写ってないけど、全体の雰囲気で何となく誰だか分かるっていうギリギリのアングルで撮られてる。これはちょっと悪質だわ」
里歩もすぐ横で眉をひそめ、低く唸った。これは相当怒っているなとわたしも感じたし、それはわたし自身も同じだった。
記事そのものを読んでいくと、こんな悪意に満ちた内容が投稿されていた。
〈篠沢グループ会長のスキャンダル発覚! 隣に写ってるのは彼氏か!?
大してイケメンでもないのに逆玉を狙った不届き者! 男のシュミ最悪!!
#この男見つけたら制裁 #この男は社会のゴミ 〉 ……
「何なのこれ……。誰がこんなひどい投稿を……」
しかもその投稿のコメント欄はすでに炎上していて、おびただしい数の拡散までされていたのだ。あまりの憤りに、スマホを持つわたしの手がブルブル震えた。
葬儀の日、父のことを散々コケにした親族にさえ、これほど強い怒りを覚えなかった。それは、彼らがわたしの目の前で言いたい放題言っていたから。確かに腹は立ったけど、「ああ、この人たちは所詮この程度の人間なんだな」と思えば諦めもついた。でも、この時は違った。目に見えない人からの悪意ほどおぞましいものはない。
「……この書き込みしたの、男みたいだね。絢乃、このアカウントに心当たりある?」
「ううん、見たこともないアカウント。だいたいわたし、男の人に恨まれる憶えなんて……」
「だろうね。じゃあ桐島さんはどう? アンタにはなくても、桐島さんが誰かから恨まれてる可能性はあるんじゃないの? っていうかこの投稿、明らかに彼に悪意の矛先が向いてるし」
「あ……、確かにそうだね。でも、どうなんだろ……? 彼だって人から恨まれるような人じゃないと思うけど」
「あーーーっ! この服装、豊洲のショッピングモールで会った時のだよね!?」
いつの間にか目の前に来ていた唯ちゃんが、写真に写るわたしたちの服装に気がついて雄叫びを上げた。