「…………なんだか、唯さんって個性的なお友だちですね」
「唯ちゃんはアニメのオタクなの。貢、お願いだから引かないでね……?」
「引きませんよ。僕は偏見なんてありませんし、大好きな絢乃さんの大事なお友だちですから」
なかなかに強烈な個性を放つ親友に、彼が引いてしまわないか心配だったけれど。「引かない」と断言してくれた彼は本当に器の大きな人だと思った。
「――ところで、唯ちゃんは今日デート?」
「うん♪ 浩介クンと初めてのデートなんだぁ♡ 三階のシネコンで映画観るの」
「そっか」
浩介さんというのが唯ちゃんの彼氏さんの名前で、一つ年上の大学生だと聞いた。ちなみに二人の共通点は、同じアニメ作品が好きだということらしい。
「そういう絢乃タンたちは? やっぱりデート?」
唯ちゃんが小首を傾げながら訊ねた。
この日のわたしの服装は、七分袖のTシャツの上から薄手のカーディガンを羽織り、スキニーデニムに淡いピンク色のフラットパンプスというちょっとカジュアルダウンした感じだった。貢と一緒だったからデートだと分かったんだろうか。
「うん、まぁね。彼のお誕生日がもうすぐだから、今日彼のお家で早めにお祝いしようってことになって。お料理の材料とかプレゼントとか一緒に買いに来たの」
「そっか、お家デートかぁ。いいなぁ……。あ、シネコンっていえば、今日小坂リョウジさんがそこで映画の舞台挨拶するんだって。里歩タンなら喜んで観にきてたかなぁ」
「小坂さんが? 里歩も来なかったと思うよ。あの熱愛報道でファンやめたらしいから」
「そうなんだ?」
「うん。――あ、ゴメンね唯ちゃん。わたしたち、そろそろ行くから。また連休明けに学校でね」
「唯さん、失礼します」
「は~い☆ じゃあね、絢乃タン」
――彼女はその後、待ち合わせをしていた彼氏さんから連絡があったらしく、スマホの画面を見ながらフラフラと歩いて行った。
「――絢乃さん。小坂リョウジさんっていうと、絢乃さんがCM共演をお断りしたあの人ですよね?」
「そう。あの人、女性にだらしないっていうか、節操ないらしくて。ホント、共演しなくてよかった。わたしは別にファンでも何でもなかったし、貢以外の男性は眼中になかったからね」
「絢乃さん……」
わたしが彼の腕を取ってニコリと微笑むと、彼はまるで思春期の男の子みたいに頬を真っ赤に染めていた。
そんなラブラブモード全開のわたしたちを、まさかのあの人が隠し撮りしていたなんて……。わたしたちはこの時、夢にも思っていなかった。
「唯ちゃんはアニメのオタクなの。貢、お願いだから引かないでね……?」
「引きませんよ。僕は偏見なんてありませんし、大好きな絢乃さんの大事なお友だちですから」
なかなかに強烈な個性を放つ親友に、彼が引いてしまわないか心配だったけれど。「引かない」と断言してくれた彼は本当に器の大きな人だと思った。
「――ところで、唯ちゃんは今日デート?」
「うん♪ 浩介クンと初めてのデートなんだぁ♡ 三階のシネコンで映画観るの」
「そっか」
浩介さんというのが唯ちゃんの彼氏さんの名前で、一つ年上の大学生だと聞いた。ちなみに二人の共通点は、同じアニメ作品が好きだということらしい。
「そういう絢乃タンたちは? やっぱりデート?」
唯ちゃんが小首を傾げながら訊ねた。
この日のわたしの服装は、七分袖のTシャツの上から薄手のカーディガンを羽織り、スキニーデニムに淡いピンク色のフラットパンプスというちょっとカジュアルダウンした感じだった。貢と一緒だったからデートだと分かったんだろうか。
「うん、まぁね。彼のお誕生日がもうすぐだから、今日彼のお家で早めにお祝いしようってことになって。お料理の材料とかプレゼントとか一緒に買いに来たの」
「そっか、お家デートかぁ。いいなぁ……。あ、シネコンっていえば、今日小坂リョウジさんがそこで映画の舞台挨拶するんだって。里歩タンなら喜んで観にきてたかなぁ」
「小坂さんが? 里歩も来なかったと思うよ。あの熱愛報道でファンやめたらしいから」
「そうなんだ?」
「うん。――あ、ゴメンね唯ちゃん。わたしたち、そろそろ行くから。また連休明けに学校でね」
「唯さん、失礼します」
「は~い☆ じゃあね、絢乃タン」
――彼女はその後、待ち合わせをしていた彼氏さんから連絡があったらしく、スマホの画面を見ながらフラフラと歩いて行った。
「――絢乃さん。小坂リョウジさんっていうと、絢乃さんがCM共演をお断りしたあの人ですよね?」
「そう。あの人、女性にだらしないっていうか、節操ないらしくて。ホント、共演しなくてよかった。わたしは別にファンでも何でもなかったし、貢以外の男性は眼中になかったからね」
「絢乃さん……」
わたしが彼の腕を取ってニコリと微笑むと、彼はまるで思春期の男の子みたいに頬を真っ赤に染めていた。
そんなラブラブモード全開のわたしたちを、まさかのあの人が隠し撮りしていたなんて……。わたしたちはこの時、夢にも思っていなかった。