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――そして、大型連休も終わりに近づいた五月初旬のある日。わたしは午後から貢と二人連れだって、豊洲の大型ショッピングモールを訪れていた。貢の誕生日を早めに祝うべく、この施設に入っている高級志向のスーパーでカレーの材料と彼ご所望のチョコレートケーキ、飲み物を買うことにしていたのだ。
「――貢、今日の主役なのに荷物持ってくれてありがとね。けっこう重いでしょ?」
歩き疲れとショッピング疲れもあり、適当なベンチで休憩している時に、わたしは荷物持ちを買って出てくれた彼を労わった。
ショッピングバッグは食材である野菜や牛肉、飲み物などでパンパンになっていて、かなりの重量になっていたはずだ。こういう時、さり気なく重い荷物を持ってくれる男性がいるのは本当にありがたいと思った。
「いえいえ。これでも男ですから、これくらいの重さは平気です。総務課の仕事で鍛えられましたからね。それより、支払いありがとうございました」
「ううん、いいの。けっこうな金額になっちゃったし、わたしも思い切ってクレジットカード使いたかったんだ」
わたしは春休み中にクレジットカードの申請をして、その審査があっさり通ってしまった。最初は普通のカードだったけれど、一年経った今はすでにゴールドになっている。ブラックになるのも時間の問題かもしれない。何せ、わたしの銀行口座には数十億円という金額が常に入っているし、月に五千万円の収入もあるのだ。……それはさておき。
さすがは高級スーパーだけあって、このお店の商品はどれもいいものばかりだけれどその分値も張るので、合計金額がとんでもない数字になっていた。そこで、支払いをクレジット決済にしてもらったのだった。
「でも心配しないでね。そんなに無駄使いはしてないから。特に自分のためには」
「じゃあ他の人のためには使ってるってことですよね? あまり気前がよすぎるのもどうかと思いますけど」
「うん……そうだよねぇ。分かった。忠告どうもありがと」
彼の言ったことの意味は理解できた。なまじ気前がよすぎると、詐欺に遭う可能性もある。それに、お金目当てで近づいてくる人たちもわんさか集まってくるということだ。つまりはカモにされる危険度が高くなる、と。彼はその心配をしてくれているんだと思った。
「僕は絢乃さんのチャリティー精神、キライじゃないですけど。その懐の深さがいつかアダになるんじゃないかって心配で」
「……そっか」