「篝。姫子《ひめこ》を連れておいで」
銀太にこれまでの状況を説明する時間をくれた後で、アマネが篝に声をかけた。
「かしこまりました」
篝は立ち去り、しばらくして「失礼致します」と声がかかった。
「入れ」
アマネの一声で襖が開く。
襖の向こうに着物姿ののっぺらぼうが跪いているのが見えた。この大きな屋敷にはのっぺらぼうのお手伝いさんもいるらしい。
「こんばんはアマネ様。そして初めまして皆さま。こんな姿で失礼致します」
篝にお姫様抱っこされて入って来たのは、漆黒の髪に赤い瞳をした美少女だった。
篝の目は真紅だが、彼女の目はオレンジ寄りの赤で、白い上着を着ている。
新たに用意された座布団の上に篝が乗せると、彼女は「ありがとうございました」と綺麗な声で礼を言った。
音もなく襖が閉まり、襖の開閉を担当していたのっぺらぼうが見えなくなる。
「彼女がお主たちに任せたいあやかしじゃ。名乗りなさい」
襖の向こう、一段上の床に戻ったアマネが促す。
「はい。あたし、姫子といいます。人としての名前は魚住《うおずみ》姫子です」
「人としての名前……?」
床に両手をついてお辞儀する彼女を見て、どこか呆然としたように朝陽が呟く。その姿は人に戻っていた。
銀太にこれまでの状況を説明する時間をくれた後で、アマネが篝に声をかけた。
「かしこまりました」
篝は立ち去り、しばらくして「失礼致します」と声がかかった。
「入れ」
アマネの一声で襖が開く。
襖の向こうに着物姿ののっぺらぼうが跪いているのが見えた。この大きな屋敷にはのっぺらぼうのお手伝いさんもいるらしい。
「こんばんはアマネ様。そして初めまして皆さま。こんな姿で失礼致します」
篝にお姫様抱っこされて入って来たのは、漆黒の髪に赤い瞳をした美少女だった。
篝の目は真紅だが、彼女の目はオレンジ寄りの赤で、白い上着を着ている。
新たに用意された座布団の上に篝が乗せると、彼女は「ありがとうございました」と綺麗な声で礼を言った。
音もなく襖が閉まり、襖の開閉を担当していたのっぺらぼうが見えなくなる。
「彼女がお主たちに任せたいあやかしじゃ。名乗りなさい」
襖の向こう、一段上の床に戻ったアマネが促す。
「はい。あたし、姫子といいます。人としての名前は魚住《うおずみ》姫子です」
「人としての名前……?」
床に両手をついてお辞儀する彼女を見て、どこか呆然としたように朝陽が呟く。その姿は人に戻っていた。