「親としては心配するわよお。責任が持てる年になるまでそういうことはしないように」
「わかってるよ、もう!」
 顔を赤くして言うと、不意打ちのように抱きしめられた。正確には、抱きしめられる真似をされた。

 母の身体から立ち上る金色の粒子が、蛍のように視界を舞う。

「成長した可愛い娘に会えて、同じ時間を過ごせて本当に良かった。短い間だったけど幸せだったわ。お父さんのこと、許してくれてありがとうね」
 涙がじわりと滲んだ。

「……許すも何もないよ。わたしこそ、お母さんに会えて嬉しかったよ。いままでご飯作ってくれてありがとう。帰ったときに出迎えてくれてありがとう」
「うん。元気でやりなさい。こっちも銀太くんと楽しくやるからさ。姫子ちゃん」
 と、母は美緒の隣にいる姫子に声をかけた。

「王子様のために人間になったんだから、ハッピーエンドで締めなさいね」
「はい。大丈夫です、それ以外はありえませんので」
 姫子は微笑んだ。

「よろしい」
 母は微笑み返して抱擁を解き、足元の銀太に手を差し伸べた。
 銀太は慣れた様子で母の腕の中に飛び込み、身体ごとこちらを向く。

「お兄ちゃん、いままで本当にありがとう。ぼくはお兄ちゃんの弟で本当に幸せだったよ。お兄ちゃんはこれまでぼくのことばっかりで、自分を犠牲にしてまで尽くしてくれたけど、これからは自分が幸せになることだけ考えてね。美緒と幸せになってね」
「ああ」
 朝陽が目を細め、頷いた。