アパートに戻って泥のように眠り、自然に目を覚ましたときにはとうに陽が高く昇っていた。
事件の翌日。日曜日の昼である。
「おはよう、美緒」
服を着替えてリビングに行くと、エプロン姿で台所に立っていた姫子が振り返った。
右手には包丁、左手で押さえているのはキャベツ。
細く綺麗に刻まれたキャベツが小山を作っている。
「……お母さん?」
「あれ、どうしてわかったの?」
姫子は――もとい、姫子に乗り移っている母は笑った。
「姫子ちゃんは料理できないもん」
優に振る舞いたいと言って姫子が料理に初挑戦したときは鍋が爆発し、悲惨なことになった。
「そうなのねー。うん、正解。姫子ちゃんにお願いして、しばらく身体を借りてるのよ」
母は包丁を置いて手を洗い、鍋に点火した。
鍋の中身はみそ汁だ。
みその香りに刺激されたらしく、腹の虫が小さく鳴いた。
長いこと爆睡していたおかげで胃は空っぽだ。
「朝陽くんと銀太くんは?」
「買い物に出かけてもらったわ。親子水入らずで話したかったの。十年ぶりに会ったわけだし。さ、ぼうっと突っ立ってないで顔を洗っておいで。すぐご飯の支度するから」
「……うん」
懐かしい記憶が蘇る。
朝起きると、母はいつもそう言った。
事件の翌日。日曜日の昼である。
「おはよう、美緒」
服を着替えてリビングに行くと、エプロン姿で台所に立っていた姫子が振り返った。
右手には包丁、左手で押さえているのはキャベツ。
細く綺麗に刻まれたキャベツが小山を作っている。
「……お母さん?」
「あれ、どうしてわかったの?」
姫子は――もとい、姫子に乗り移っている母は笑った。
「姫子ちゃんは料理できないもん」
優に振る舞いたいと言って姫子が料理に初挑戦したときは鍋が爆発し、悲惨なことになった。
「そうなのねー。うん、正解。姫子ちゃんにお願いして、しばらく身体を借りてるのよ」
母は包丁を置いて手を洗い、鍋に点火した。
鍋の中身はみそ汁だ。
みその香りに刺激されたらしく、腹の虫が小さく鳴いた。
長いこと爆睡していたおかげで胃は空っぽだ。
「朝陽くんと銀太くんは?」
「買い物に出かけてもらったわ。親子水入らずで話したかったの。十年ぶりに会ったわけだし。さ、ぼうっと突っ立ってないで顔を洗っておいで。すぐご飯の支度するから」
「……うん」
懐かしい記憶が蘇る。
朝起きると、母はいつもそう言った。