でも、美緒は鳥籠が烏丸の手に渡る寸前で掴んだ。

「何のつもりじゃ?」
「烏丸様。仕置きを望まれるのは当然ですが、命だけは助けると約束してください。わたしは百地さんと、茨の息子と約束したんです。茨の命だけは保証すると。彼の協力がなければこうして茨を捕らえることはできませんでしたし、黒田さんの命を守ってくれたのも彼なんです。わたしも茨のことは大嫌いですが、いくら嫌いな相手でも死んでほしいとまでは思いません。どうかお願いします」
 懇願すると、烏丸は鳥籠の中の茨を見た。

「哀れよのう茨。憎くて堪らん娘に情けをかけられる気分はどうじゃ」

「……殺せ」
 茨は唾棄するように言った。

「でなくば私がその娘を殺すぞ。これほどの屈辱、晴らさずにいられるか」
 見た目は可愛らしく、つぶらな雀の目なのに、憎悪が激しく燃え上がっている。

「……美緒、きっと茨はまた繰り返すぞ」
「そうよ。後顧の憂いを絶つためにも、いっそ一思いに」
「だめ」
 朝陽と母が忠告してきたが、美緒はかぶりを振った。
 命を狙われてるから殺そう、なんて、そんな簡単に思い切れるわけがない。

「わたしが屈服するまで繰り返すっていうなら、それでもいい。わたしは絶対に屈しないし、何度でもあんたは間違ってるって言ってやる。昔、あんたをぶん殴ったおばあちゃんみたいに」
 突風が横から吹き付け、あやかしたちがどよめいた。

 アマネ様、アマネ様、と子どもたちが興奮する声が聞こえ、美緒たちは驚いてそちらを見た。