高校二年生の春。新学期になって、もうすぐ一週間。春の陽射しが柔らかく降り注ぐ季節になった。ただ季節が移ろい変わって、高校に入って二周目の春がやって来ただけだとその時は思っていたけど、違った。部員で、四チームに分かれて練習試合をしている時に、カメラを首にさげた君が体育館へと迷い込んできた。
レンズ越しに感じる視線がどこか懐かしい。この感覚、実は二度目。その視線を感じながら、シュートを放つ。ブザーの音ともにスリーポイントシュートが決まる。
まさか、二度も同じ経験するとは…どんな子なんだろう。
視線を感じた方向に、目を向けるといた。
肩を小さくして、怯えている子猫のように可愛い君が立っていた。彼の名前は、月島由真くん。写真部で…あとは、瞳が綺麗。体育で着替える時に、一瞬眼鏡をはずしている姿を見かけたのだが、気づけば、その瞳が放つ透明感に心を奪われた。まるでターコイズのようで、なぜだか胸が一瞬だけど、高鳴り、正体不明な特別な何かが流れ込む感覚を覚えた。
月島由真くん。俺は彼のことを月くんと呼ぶようになり、ある日のお昼休憩に、写真部の部室前で彷徨っていた所を保護し、一緒にご飯を食べるようになり、それから、月くんは、写真部の活動をする傍ら、バスケ部の写真を撮りに来てくれるようになり、試合の応援にも駆けつけてくれるようになった。
でも、球技大会で、事件が起こった。バスケ部に元所属していた悪い先輩たちが、偶々球技大会の種目がバスケで、そして、対戦相手で、体育館を貸し切って練習をした時から、月くんに嫌がらせをしていた。本番でも、月くんに悪質な行為をして、試合を妨害しようとしていたが、月くんはあくどい先輩たちに屈することなく、最後まで、一生懸命プレーをしていた。その姿を見て、胸を打たれた。1セット目は、取られてしまったが、元バスケ部の先輩としてもそうだし、大切な友達を傷つけられ、俺や功祐は彼らに対して、恨みや怒りといった感情を抱えて、試合に挑み、勝利を治めることが出来た。試合前、そのあくどい先輩と負けたら月くんに謝ると約束を取り付けたのに、しらばっくれて、どっかに行ってしまった。
せっかく、チャンスをあげたのにと溜息をつき、奥の手を使うことにした。由真の友達の泉太郎に頼んで、試合当日の俺たちの試合のビデオを回してもらった。あとで、確認すると、またまたあのあくどい先輩たちが月くんにちょっかい、いや、行き過ぎた嫌がらせをしていた。怒り心頭に発した俺は、練習で使った総合体育館の監視カメラやあくどい先輩Mの親が経営している会社の黒い噂、99%真実の情報を流して、地獄にへと追いやった。
それから、修学旅行。月くん、功祐、漣と同じ部屋になり和気藹々としていた。班別行動も月くん、そして、しずく、来夏と一緒に途中まで楽しく過ごしていたのだが、雨がすべてかっさらっていってしまい、その挙句、月くんは風邪を引いてしまった。でも、月くんの親戚の人がまさか、運ばれた先で、医師として働いているとは思いも寄らず、聞いたときは、開いた口が塞がらないほどにびっくりした。でも、そのおかげで、修学旅行の日にちが増え、色々とあったのは、いい思い出になった。
そして、クリスマス。クリスマスイブは、ウィンター杯と被っていて惜しくも負けてしまったが、功祐の知り合いの店、喫茶コッコでのいつものメンバーとのクリスマスパーティー兼打ち上げは盛り上がった。特に、月くんのなごり雪が、今でも鮮明に記憶に残っている。
その次のクリスマスの日。俺は、小学生の時によく使っていたバスケットゴールが置いてある公園で、バスケの練習をしていた。昨日は負けてしまったけど、一日でもボールに触らない日が出てしまうと感覚が鈍ってしまいそうで、必ず触るようにしていた。その日は、初心を思い出そうと、訪れたのだが、気づけば夢中になり、シュート練習を黙々としていた。昔は、ゴールが遠くに見えたのに、今では近くに見える。成長したからかなと思い、あの時の一個もシュートが入らず自己嫌悪に陥っていた時に比べると、あの日、この場所で初めてシュートが入ってから、流れが変わり始めた。壁にぶち当たることは何度もあっても、諦めることは無かった。立ち止まっても、後退することはなかった。
シュートを放っていると、誰かのレンズが自分の方に向けられていることに気づいた。ゴールに入り、ボールが落ちた先に走っていき、ボールを手にしてから、定位置に戻ろうとしたら、目が合う。
月くんだった。
こんなところで⁉ と一瞬思い、言葉を失うが、偶々近くにある、おじいちゃんの家に遊びに来たらしい。そして、お父さんと別れてコンクールに出す写真を撮っていたみたいだった。月くんのお父さんにごはんに誘われ、月くん家の写真館が気になったので、お邪魔することにした。月くんの家族は想像していた通り、温かかった。月くんのおじいちゃんは、クリスマスに人間ドックでパワフルだなと思ったし、お父さんの尚人さんとお母さんの瑞穂さんから垣間見える仲の良さに胸がときめき、月くんの妹の由那ちゃんは、月くんと似て顔を染める仕草が可愛らしかった。
美味しいご馳走をよばれ、写真館を案内されている時、一枚の写真に釘付けになっていた。男の子が夕日の空の下で、バスケの練習をしている写真。これは、バスケを初めて、シュートが決まらず自己嫌悪に陥っていた時だ。でも、この時、当時の自分と同じぐらいの子がカメラを持っているなと横目で気にしつつも、シュートが入らず、心の中ではイライラしていた。でも、そのレンズ越しの視線が注がれているのを感じ、イライラが消えていき、心を落ち着かせ、放ったシュートが初めて決まった。その女の子にお礼を言いたかったのだけど、おばあちゃんに呼ばれて帰って行った。名前を呼んでいたのだが、肝心の名前を覚えていない。でも、ちゃん付けで、横顔はショートヘアで、横顔だけしか確認できなかったけど、雰囲気で「可愛い」と思ってしまい、その子のことが頭から離れず、胸の鼓動の高鳴りが止まらないことから、これが恋なのだと初めて自覚した。ずっと、その子のことを探して、あの時のお礼を言いたかったが、親の海外赴任を機にアメリカに行くことになってから、それが叶わなくなった。高校入学を機にまた日本に戻って来たが、初恋は心の片隅にもありながらも、バスケ漬けの日々や勉強、学校生活に慣れることに必死で、探す余裕もなかったし、見つかっても、あんなに可愛い子、もうすでに恋人がいるだろうと思い、出会えたとしても感謝の言葉を伝えるだけで終わるだろうと思っていた。
でも、まさか、高校での学校生活2周目で、運命の再会を果たすとは思っていなかった。あの日、向けられていたレンズの持ち主が月くんだったとは…その真実は知った時は、衝撃を受けたが、納得がいった。高校の体育館でシュートを打った時に懐かしいなと思った理由が分かって、心のモヤモヤが雪のように解けていくようにスッキリし、その代わりに、一緒に過ごす時間が長いほど、月くんへの想いが恋愛感情として熱を帯びていった。
でも、俺のせいで、月くんが何者かに刺される事件が起きた。幸い、命の危機に陥らなかったが、三週間の入院が必要な怪我を負わせてしまった。後に、しずくから、犯人は、同じ学校の同級生の女子で、俺が告白を断った相手だと知り、俺のSNSのアカウントに誹謗中傷していたのがその親だと知り、怒りの感情が二回に分けて荒波のように押し寄せてきた。月くんも、脅迫状を受け取っていたとは知らず、犯人が見つかるまで、距離を取った方がいいと思い、U18の大会に向けて、バスケに没頭していった。孤独で、胸が千切れそうになるが、その度に、月くんが撮ってくれた星稜高校バスケ部での思い出の写真、友達との写真を見返し、そして、初めてシュートが決まった写真を月くんには内緒で、こっそりデータを月くんのお父さんから貰ってから、スマホのロック画面に設定して、壁にぶち当たる度に、初心を思い出して心を震い立たせていた。
レンズ越しに感じる視線がどこか懐かしい。この感覚、実は二度目。その視線を感じながら、シュートを放つ。ブザーの音ともにスリーポイントシュートが決まる。
まさか、二度も同じ経験するとは…どんな子なんだろう。
視線を感じた方向に、目を向けるといた。
肩を小さくして、怯えている子猫のように可愛い君が立っていた。彼の名前は、月島由真くん。写真部で…あとは、瞳が綺麗。体育で着替える時に、一瞬眼鏡をはずしている姿を見かけたのだが、気づけば、その瞳が放つ透明感に心を奪われた。まるでターコイズのようで、なぜだか胸が一瞬だけど、高鳴り、正体不明な特別な何かが流れ込む感覚を覚えた。
月島由真くん。俺は彼のことを月くんと呼ぶようになり、ある日のお昼休憩に、写真部の部室前で彷徨っていた所を保護し、一緒にご飯を食べるようになり、それから、月くんは、写真部の活動をする傍ら、バスケ部の写真を撮りに来てくれるようになり、試合の応援にも駆けつけてくれるようになった。
でも、球技大会で、事件が起こった。バスケ部に元所属していた悪い先輩たちが、偶々球技大会の種目がバスケで、そして、対戦相手で、体育館を貸し切って練習をした時から、月くんに嫌がらせをしていた。本番でも、月くんに悪質な行為をして、試合を妨害しようとしていたが、月くんはあくどい先輩たちに屈することなく、最後まで、一生懸命プレーをしていた。その姿を見て、胸を打たれた。1セット目は、取られてしまったが、元バスケ部の先輩としてもそうだし、大切な友達を傷つけられ、俺や功祐は彼らに対して、恨みや怒りといった感情を抱えて、試合に挑み、勝利を治めることが出来た。試合前、そのあくどい先輩と負けたら月くんに謝ると約束を取り付けたのに、しらばっくれて、どっかに行ってしまった。
せっかく、チャンスをあげたのにと溜息をつき、奥の手を使うことにした。由真の友達の泉太郎に頼んで、試合当日の俺たちの試合のビデオを回してもらった。あとで、確認すると、またまたあのあくどい先輩たちが月くんにちょっかい、いや、行き過ぎた嫌がらせをしていた。怒り心頭に発した俺は、練習で使った総合体育館の監視カメラやあくどい先輩Mの親が経営している会社の黒い噂、99%真実の情報を流して、地獄にへと追いやった。
それから、修学旅行。月くん、功祐、漣と同じ部屋になり和気藹々としていた。班別行動も月くん、そして、しずく、来夏と一緒に途中まで楽しく過ごしていたのだが、雨がすべてかっさらっていってしまい、その挙句、月くんは風邪を引いてしまった。でも、月くんの親戚の人がまさか、運ばれた先で、医師として働いているとは思いも寄らず、聞いたときは、開いた口が塞がらないほどにびっくりした。でも、そのおかげで、修学旅行の日にちが増え、色々とあったのは、いい思い出になった。
そして、クリスマス。クリスマスイブは、ウィンター杯と被っていて惜しくも負けてしまったが、功祐の知り合いの店、喫茶コッコでのいつものメンバーとのクリスマスパーティー兼打ち上げは盛り上がった。特に、月くんのなごり雪が、今でも鮮明に記憶に残っている。
その次のクリスマスの日。俺は、小学生の時によく使っていたバスケットゴールが置いてある公園で、バスケの練習をしていた。昨日は負けてしまったけど、一日でもボールに触らない日が出てしまうと感覚が鈍ってしまいそうで、必ず触るようにしていた。その日は、初心を思い出そうと、訪れたのだが、気づけば夢中になり、シュート練習を黙々としていた。昔は、ゴールが遠くに見えたのに、今では近くに見える。成長したからかなと思い、あの時の一個もシュートが入らず自己嫌悪に陥っていた時に比べると、あの日、この場所で初めてシュートが入ってから、流れが変わり始めた。壁にぶち当たることは何度もあっても、諦めることは無かった。立ち止まっても、後退することはなかった。
シュートを放っていると、誰かのレンズが自分の方に向けられていることに気づいた。ゴールに入り、ボールが落ちた先に走っていき、ボールを手にしてから、定位置に戻ろうとしたら、目が合う。
月くんだった。
こんなところで⁉ と一瞬思い、言葉を失うが、偶々近くにある、おじいちゃんの家に遊びに来たらしい。そして、お父さんと別れてコンクールに出す写真を撮っていたみたいだった。月くんのお父さんにごはんに誘われ、月くん家の写真館が気になったので、お邪魔することにした。月くんの家族は想像していた通り、温かかった。月くんのおじいちゃんは、クリスマスに人間ドックでパワフルだなと思ったし、お父さんの尚人さんとお母さんの瑞穂さんから垣間見える仲の良さに胸がときめき、月くんの妹の由那ちゃんは、月くんと似て顔を染める仕草が可愛らしかった。
美味しいご馳走をよばれ、写真館を案内されている時、一枚の写真に釘付けになっていた。男の子が夕日の空の下で、バスケの練習をしている写真。これは、バスケを初めて、シュートが決まらず自己嫌悪に陥っていた時だ。でも、この時、当時の自分と同じぐらいの子がカメラを持っているなと横目で気にしつつも、シュートが入らず、心の中ではイライラしていた。でも、そのレンズ越しの視線が注がれているのを感じ、イライラが消えていき、心を落ち着かせ、放ったシュートが初めて決まった。その女の子にお礼を言いたかったのだけど、おばあちゃんに呼ばれて帰って行った。名前を呼んでいたのだが、肝心の名前を覚えていない。でも、ちゃん付けで、横顔はショートヘアで、横顔だけしか確認できなかったけど、雰囲気で「可愛い」と思ってしまい、その子のことが頭から離れず、胸の鼓動の高鳴りが止まらないことから、これが恋なのだと初めて自覚した。ずっと、その子のことを探して、あの時のお礼を言いたかったが、親の海外赴任を機にアメリカに行くことになってから、それが叶わなくなった。高校入学を機にまた日本に戻って来たが、初恋は心の片隅にもありながらも、バスケ漬けの日々や勉強、学校生活に慣れることに必死で、探す余裕もなかったし、見つかっても、あんなに可愛い子、もうすでに恋人がいるだろうと思い、出会えたとしても感謝の言葉を伝えるだけで終わるだろうと思っていた。
でも、まさか、高校での学校生活2周目で、運命の再会を果たすとは思っていなかった。あの日、向けられていたレンズの持ち主が月くんだったとは…その真実は知った時は、衝撃を受けたが、納得がいった。高校の体育館でシュートを打った時に懐かしいなと思った理由が分かって、心のモヤモヤが雪のように解けていくようにスッキリし、その代わりに、一緒に過ごす時間が長いほど、月くんへの想いが恋愛感情として熱を帯びていった。
でも、俺のせいで、月くんが何者かに刺される事件が起きた。幸い、命の危機に陥らなかったが、三週間の入院が必要な怪我を負わせてしまった。後に、しずくから、犯人は、同じ学校の同級生の女子で、俺が告白を断った相手だと知り、俺のSNSのアカウントに誹謗中傷していたのがその親だと知り、怒りの感情が二回に分けて荒波のように押し寄せてきた。月くんも、脅迫状を受け取っていたとは知らず、犯人が見つかるまで、距離を取った方がいいと思い、U18の大会に向けて、バスケに没頭していった。孤独で、胸が千切れそうになるが、その度に、月くんが撮ってくれた星稜高校バスケ部での思い出の写真、友達との写真を見返し、そして、初めてシュートが決まった写真を月くんには内緒で、こっそりデータを月くんのお父さんから貰ってから、スマホのロック画面に設定して、壁にぶち当たる度に、初心を思い出して心を震い立たせていた。