外は本格的な冬の気配が漂い始めていた。朝の空気は肌を刺すように冷たく、街路樹の葉もほとんどが落ち、歩道には色づいた葉がところどころに敷き詰められている。夕方になると、空は早々にオレンジから深い藍色に染まり、家々や店先の小さなイルミネーションがちらほらと光り始める。冷たい風が通りを吹き抜けるたびに、少し遅れて散る最後の枯葉がひらひらと舞い、やがて静かに地面へと降り積もっていった。もう11月終わり、あと一カ月で今年も終わるという時に、先生から封筒を渡された。心臓が早鐘を打つように脈打ち、手がかすかに震えているのを感じる。封筒の中に指先を差し込み、緊張と期待が入り混じった気持ちでゆっくりと封を開けた。すると、「合格」と言う文字が目に入る。心がふわりと軽くなり、思わず笑みがこぼれた。何度も何度も読み返し、合格という事実が少しずつ現実のものとして心に染み渡っていく。これで、心海さんが言っていた第二関門クリアした。夢だったスポーツカメラマンへの道が、少しずつ近づいてきていると実感する。
 封筒を胸に抱え、職員室を後にし、教室に戻ろうとすると、スポーツバッグを肩にかっけた晴陽と出くわす。
 いつぶりだろう。半年はもう会っていない気がする。予測していなかった再会に、ポップコーンが弾けたかのような衝撃に陥る。LINEではやり取りしていたけれど、直接…面と向かって話すのは久しぶりすぎて言葉が出てこない。
「元気?」
 由真が言葉を振り絞る。間違っていないはず。久方ぶりに会った人には、この言葉をかけるのが一般的なはず。
「うん」
 晴陽は、端的に頷く。
「良かった」
「月くんは?」
 晴陽が、由真の胸に視線を遣り、重い岩を引っ張っているかのように口を開く。
「うん、元気」
 由真は顔を引きつらせながら、言葉を滑らす。
「良かった。じゃあ」
 晴陽はすぐ会話を終わらせて、反対方向に歩いて行く。志望校合格したって伝えたかったのに、晴陽の沈んだ表情を見て、言葉が喉の奥に引っ込んでいった由真は、晴陽の背中を見て、胸が苦しくなった。