三日後、アメリカとの準決勝の試合が行われた。この日は、学校だったので、写真部の部室のテレビで観戦することにした。スペイン戦での由那を覗いたメンバーに加え、今回は、泉太郎とメリッサが加わった。
　日本とアメリカの試合が始まると、画面越しから伝わるほど、会場は熱気に包まれていた。選手たちはそれぞれの国の応援団の声に応え、気合を入れてコートに立った。晴陽はウォームアップの際、全身に力を入れ、試合が始まる瞬間を待ち構えていた。
　試合開始のホイッスルが鳴ると、アメリカチームの圧倒的な身体能力が光った。序盤、アメリカの選手たちの素早い動きと力強いシュートが続き、点差が開いていく。日本の選手たちも粘り強く守りを固め、時折晴陽が決定的なシュートを放つ。応援団の声援が後押しし、晴陽はプレッシャーを感じながらも、自分の役割を果たそうと必死になった。
　試合は進むにつれ、アメリカのリードは広がったが、日本も徐々に流れを取り戻していく。晴陽はリバウンドを獲得し、素早くカウンターに持ち込む場面が増え、観客席からは「晴陽！」という歓声が響く。彼のシュートはリングに吸い込まれ、点差を縮める。試合終盤には、日本は猛追を見せ、最後の数分で勝利の可能性が見えてきた。
　だが、アメリカも負けじと得点を重ね、最終的には試合終了のホイッスルが鳴った時、スコアは78対72。日本は惜しくも敗れた。選手たちはコートで立ち尽くし、悔しさを噛み締めていた。
「惜しかった…」
　功祐が呟くと、皆、無言のままそれぞれの思いを抱えていた。
「でも、迫力のある試合だった。すごさのあまり、言語化できないほど」
　メリッサが、心を奪われたかのように画面越しに映る膝に手を置いて息を整えている晴陽に視線を送っていた。すると、メリッサが涕泣していた。
「メリッサの言うとおり」
　しずくが、メリッサの横に立ちハンカチを渡すと、メリッサは素直に受け取り、「ありがとう」と目頭を押さえ、そのハンカチで鼻をかんでいた。
「ちょ、ちょぉっと」
「倍にして返すから」
　メリッサの謎の「倍」発言に困惑しながらも、晴陽の頑張りを画面越しで見れたし、しずくは、まぁ、いっかとなる。メリッサの涙を見ていると、しずくまでもが、伝染して、目頭が熱くなる。
　ハンカチ二枚持つほど、女子力最上級女子じゃないからな…どうしよう、この涙…と思っていると、功祐がさりげなく、しずくにハンカチを渡す。
「あ、ありがとう」
「ちゃんと洗っているから安心しろ」
　功祐は、泣いている姿をあまり見られたくないというしずくから目を逸らし、低い声で言う。しずくは、功祐の言葉を聞いて、ハンカチを広げ、顔を覆い、すすり泣いていた。その姿を見て、功祐は、抱きしめようとしたが、もともと付き合っていたが、色々あって別れてしまったため、今は友達以上恋人未満の関係だから、しずくに触れようとした手をそっと引っ込めて、唇を噛みしめてもどかしい表情を浮かべていた。