7月に入ると、街には夏の気配が一層色濃くなった。陽射しは真っ直ぐに降り注ぎ、アスファルトの上を揺らすような熱気が立ち込めている。
晴陽がいない今年のインターハイ予選はあと一歩の所で、敗退と言う結果に終わった。試合の終盤、星稜高校バスケ部は意地を見せ、何度も何度もゴールに迫っていく。シュートが決まるたび、ベンチや応援席からも歓声が上がり一体感を見せていた。だが、最後の2分、相手の巧妙なパスワークとプレッシャーで苦しめられ、わずかなミスが重なり、スコアはじりじりと引き離されていった。残り数秒で放たれたシュートも無情にもリングに弾かれ、試合終了のブザーが鳴り響いた。選手たちはしばらくの間、その場に立ち尽くし、無言で肩を落とした。功祐は膝に手をつき、息を整えながら前を見つめていた。
「これが…俺たちの力か…」
誰かが小さく呟き、他の選手も一様に頷く。
観客席でその様子をカメラ越しに見ていた由真は、胸が締めつけられるような痛みを感じた。彼は最後まで諦めず戦い続けた星稜高校バスケ部に労いの気持ちを込めて拍手を送り始める。その音に気づいたメリッサも、感化されて拍手を始め、いつしか星稜高校の応援団、そして会場全体が温かい拍手で包まれていった。
試合会場を出た所で、コーチの津野と顧問の田丸が各々、出場した選手、部員に声をかけていく。
「皆、お疲れさま。惜しかったな…本当に、あと一歩だった」
津野が空を見上げて、静かに呟く。
「よく頑張った。晴陽が抜けてから、特に三年生が率先してこのチームの団結力をあげてくれたから、ここまで来れた。大健闘だった。自分を責めないで、皆頑張ったんだから、拍手」
津野が拍手をし始めると、持っている荷物を地面に置いて拍手をし始め、溜め込んでいた涙を流す選手や部員で溢れる。その姿を見て、由真もカメラ越しにもらい泣きをし、シャッターを切る。
「田丸先生も何か言葉をかけてあげてください」
津野は、田丸の背中を叩く。
「お疲れ様でした。結果は残念でしたけど、今までの試合で一番感動しました。エースがいないチームで誰がエースとかではなく、皆が団結して発揮し前に突き進んでいく姿が僕の目にはエースとして映っていました。今日の悔しさをばねに、後輩たちは、どんどん突き進んでいきましょう。三年生たちはお疲れ様でした。三年生たちの背中は、後輩たちにとって、目標に向かって突き進む道標になったと思います。結果も大事ですが、それ以上にどう頑張って来たか、あがいてきたかの方が、これからの人生を生きる上で大切になってきます。それを学べたのなら、これから君たちはもっと飛躍していきます。だから、大丈夫です。君たちは」
田丸の言葉に皆の胸が熱くなる。そんな風に思っていただなんて…興味がない振りして、実はよく見ていただなんて…案外、熱心な先生だったんだ…と皆心の中では、そう思っていた。
「俺たちの高校でのバスケ漬けの日々は終わってしまったけど、晴陽はまだ走り続けているんだよな」
クリスマスパーティーぶりに、喫茶コッコで、しずく、漣、功祐、由真はお疲れ様会を繰り広げている。
「そうだね。受験勉強頑張りつつも、晴陽の応援も頑張ろ!」
「そうだな」「うん」
功祐、漣、由真がフライドポテトを頬張りながら頷く。
「受験勉強に本腰入れないとな」
漣が、真剣な顔をして俯く。
「皆は進路どうするの?」
しずくが興味津々の様子で、皆に問いかける。
「私も気になるわ」
心海が、ビール缶を手にしながら、ソファーの端に座る。
「俺は、推薦で、法成大学の経済学部行こうと思っている」
「俺は、医者になりたいから、医学部。まだ、大学は決まっていないけど」
「まぁ! 私も漣くんに診察してもらいたいわ」
心海の心の声を漏らす。
「しずくちゃんは?」
「心理学学びたいなって思っています。今は心理療法士という職業に興味あります」
「まぁ! しずくちゃんと話していると心安らぐもんね。最後は、由真くん」
「僕は、スポーツカメラマンになりたいなと思っています」
「おぉ!」
感嘆の声が湧き上がる。
「代々続く写真家一家だからとか関係なしに、バスケ部で写真を撮らせていただくようになってから、スポーツならではの躍動感や熱気に心を揺さぶられ、レンズ越しに競技に懸命に向き合う選手たちの姿や、勝利の瞬間だったり、悔し涙を流す場面を切り取るうちに、それらを、カメラを通じて世界に伝えたいと心の底から思うようになりました」
「月くんなら、世界を揺るがすようなカメラマンになれるよ!」
しずくが、由真の言葉に感銘を受ける。
「俺たちも応援する!」
功祐と漣が感服した様子で、由真を見つめる。
「すごいわね。考えがしっかりしていて。夢を語る由真くんの目がキラキラしているのがいいわ。夢が叶う叶わない関係なしに、まずは、その夢への熱意を口にすることが大事だから、皆、功祐も第一関門はクリアしているわよ。そこから、夢に向かってどうアプローチしていくかがカギになるわよ。皆が第二関門をクリアして、夢を実現できるように心から祈っておくわよ」
「心海さん! ありがとう」
皆、心海の言葉をしっかり胸に受け止めていた。
晴陽がいない今年のインターハイ予選はあと一歩の所で、敗退と言う結果に終わった。試合の終盤、星稜高校バスケ部は意地を見せ、何度も何度もゴールに迫っていく。シュートが決まるたび、ベンチや応援席からも歓声が上がり一体感を見せていた。だが、最後の2分、相手の巧妙なパスワークとプレッシャーで苦しめられ、わずかなミスが重なり、スコアはじりじりと引き離されていった。残り数秒で放たれたシュートも無情にもリングに弾かれ、試合終了のブザーが鳴り響いた。選手たちはしばらくの間、その場に立ち尽くし、無言で肩を落とした。功祐は膝に手をつき、息を整えながら前を見つめていた。
「これが…俺たちの力か…」
誰かが小さく呟き、他の選手も一様に頷く。
観客席でその様子をカメラ越しに見ていた由真は、胸が締めつけられるような痛みを感じた。彼は最後まで諦めず戦い続けた星稜高校バスケ部に労いの気持ちを込めて拍手を送り始める。その音に気づいたメリッサも、感化されて拍手を始め、いつしか星稜高校の応援団、そして会場全体が温かい拍手で包まれていった。
試合会場を出た所で、コーチの津野と顧問の田丸が各々、出場した選手、部員に声をかけていく。
「皆、お疲れさま。惜しかったな…本当に、あと一歩だった」
津野が空を見上げて、静かに呟く。
「よく頑張った。晴陽が抜けてから、特に三年生が率先してこのチームの団結力をあげてくれたから、ここまで来れた。大健闘だった。自分を責めないで、皆頑張ったんだから、拍手」
津野が拍手をし始めると、持っている荷物を地面に置いて拍手をし始め、溜め込んでいた涙を流す選手や部員で溢れる。その姿を見て、由真もカメラ越しにもらい泣きをし、シャッターを切る。
「田丸先生も何か言葉をかけてあげてください」
津野は、田丸の背中を叩く。
「お疲れ様でした。結果は残念でしたけど、今までの試合で一番感動しました。エースがいないチームで誰がエースとかではなく、皆が団結して発揮し前に突き進んでいく姿が僕の目にはエースとして映っていました。今日の悔しさをばねに、後輩たちは、どんどん突き進んでいきましょう。三年生たちはお疲れ様でした。三年生たちの背中は、後輩たちにとって、目標に向かって突き進む道標になったと思います。結果も大事ですが、それ以上にどう頑張って来たか、あがいてきたかの方が、これからの人生を生きる上で大切になってきます。それを学べたのなら、これから君たちはもっと飛躍していきます。だから、大丈夫です。君たちは」
田丸の言葉に皆の胸が熱くなる。そんな風に思っていただなんて…興味がない振りして、実はよく見ていただなんて…案外、熱心な先生だったんだ…と皆心の中では、そう思っていた。
「俺たちの高校でのバスケ漬けの日々は終わってしまったけど、晴陽はまだ走り続けているんだよな」
クリスマスパーティーぶりに、喫茶コッコで、しずく、漣、功祐、由真はお疲れ様会を繰り広げている。
「そうだね。受験勉強頑張りつつも、晴陽の応援も頑張ろ!」
「そうだな」「うん」
功祐、漣、由真がフライドポテトを頬張りながら頷く。
「受験勉強に本腰入れないとな」
漣が、真剣な顔をして俯く。
「皆は進路どうするの?」
しずくが興味津々の様子で、皆に問いかける。
「私も気になるわ」
心海が、ビール缶を手にしながら、ソファーの端に座る。
「俺は、推薦で、法成大学の経済学部行こうと思っている」
「俺は、医者になりたいから、医学部。まだ、大学は決まっていないけど」
「まぁ! 私も漣くんに診察してもらいたいわ」
心海の心の声を漏らす。
「しずくちゃんは?」
「心理学学びたいなって思っています。今は心理療法士という職業に興味あります」
「まぁ! しずくちゃんと話していると心安らぐもんね。最後は、由真くん」
「僕は、スポーツカメラマンになりたいなと思っています」
「おぉ!」
感嘆の声が湧き上がる。
「代々続く写真家一家だからとか関係なしに、バスケ部で写真を撮らせていただくようになってから、スポーツならではの躍動感や熱気に心を揺さぶられ、レンズ越しに競技に懸命に向き合う選手たちの姿や、勝利の瞬間だったり、悔し涙を流す場面を切り取るうちに、それらを、カメラを通じて世界に伝えたいと心の底から思うようになりました」
「月くんなら、世界を揺るがすようなカメラマンになれるよ!」
しずくが、由真の言葉に感銘を受ける。
「俺たちも応援する!」
功祐と漣が感服した様子で、由真を見つめる。
「すごいわね。考えがしっかりしていて。夢を語る由真くんの目がキラキラしているのがいいわ。夢が叶う叶わない関係なしに、まずは、その夢への熱意を口にすることが大事だから、皆、功祐も第一関門はクリアしているわよ。そこから、夢に向かってどうアプローチしていくかがカギになるわよ。皆が第二関門をクリアして、夢を実現できるように心から祈っておくわよ」
「心海さん! ありがとう」
皆、心海の言葉をしっかり胸に受け止めていた。