春季大会の日、まだ肌寒さが残る4月の朝、緊張と期待の入り混じった空気が漂っている。星稜高校のバスケ部員たちは、各々スポーツバッグを肩に掛け、試合会場である近くの総合体育館の前に少しずつ集まり始めている。
 朝の空は澄み切っていて、薄い春の日差しがチームの顔を照らしている。晴陽も、その眩しい光を手でかざしながら、少しばかり緊張した面持ちで空を見上げていた。今日は彼にとっても最後の大切な試合の一つだ。功祐が「行こう」と軽く肩を叩き、チーム全員の前に立つ津野コーチに目を向けると、そこにはすでに戦闘モードの顔つきになったコーチの姿がある。
「今日は勝ちに行くぞ!」
 津野コーチの力強い声が響くと、部員たちは無言で頷き、心を一つにするかのように手を合わせて円陣を組む。少し離れて見守っていた由真も、ファインダー越しに皆の真剣な表情を見て、シャッターを切る。いつもと同じように、皆の背中を静かに見守る彼もまた、チームの一員であるかのように心の中でエールを送っていた。
「よし、行くぞ!」
 晴陽が声を上げると、全員の気持ちが一気に高まり、部員たちの掛け声が体育館の中へと響き渡った。